Complete text -- "「テロとの戦い」の空しさ"
10 July
「テロとの戦い」の空しさ
オリンピック招致成功で沸くロンドンで、翌日同時多発テロが起こった。折しもブレア首相が議長を務めるサミット第一日に合わせて、周到に練られたテロ計画のようにみえる。9.11テロを契機に、ブッシュ大統領を先頭に、「テロとの戦い」が宣言され、アフガンに続いて米・英・伊・豪・西などの同盟軍がイラクで戦争を始めた。その結果は皆が知る通りである。イラクでは治安の悪化はとどまるところを知らず、トルコ、スペインに続いて今度のロンドンでのテロである。何の罪もない多くの人々が犠牲になった。次はローマという見方が有力である。東京も安泰とは言えない。
初めからわかっていることであるが、力ずくでテロを完全に封じ込めることは不可能である。イラク戦争がテロを各国に拡散させ、世界を限りなく不安全にした。
今でもイラク戦争が正しかったと強弁するのは、ブッシュ政権と小泉首相ぐらいのものであろう。あの戦争を支持した人でも、口に出す出さないは別にして、今となってはまずかったなと思っているだろう。あれほど「テロとの戦い」に高揚した米国でも、いまではイラク戦争が正しかったと考える人は半数を切った。
一方に、「神のご加護を」と唱えながら、10万人以上のイラク人を殺したブッシュ政権があり、他方に、イスラムの正義のためなら手段を選ばず、無辜の人を殺しても平然としたイスラム原理主義者がいる。何れも何と愚かな者どもだろう。もっともこれまでも、大勢を不幸にする戦争の多くは、常に愚者によって始められた。
神を絶対視したらお互いに妥協は不可能である。今度のテロ後、ブレア首相が、「犯人はイスラムの名の下に犯行に及んだ」と発言したことは、テロとそれとの戦いを、宗教戦争にする危険をはらむ不用意な発言である。
窒素ラヂカル子がそのHPで何度も主張したように、宗教を相対化しなければ人類に救いは訪れない。その点で多くの日本人は、宗教を相対化できる、世界でも稀な国民である。その態度が世界の非常識だとしても、その非常識を世界の常識に変えていく絶好の位置にいるのが日本人である。
我々は二つの愚か者集団の何れをも支持せず、テロリストにテロをやろうという気を起こさせないようなやり方をしていく以外、テロの危険を少しでも減らす手段はない。(「『安全』への対極的な二つの道」参照)
23:24:58 |
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