Complete text -- "東シナ海ガス田開発問題で世論をミスリードするマスコミ"

02 October

東シナ海ガス田開発問題で世論をミスリードするマスコミ

 今日10月2日のテレビ朝日、サンデープロジェクトは、東シナ海での中国のガス田開発問題を取り上げた。この問題は初めから日本においてはボタンを掛け違えている。この点は5月13日、HP「窒素ラヂカルの正論・暴論」の「東シナ海を紛争の海にするな」という文章で議論したとおりであるので、ここで蒸し返したくはないが、この番組の司会者、田原総一郎氏を含めて、日本世論は余りにも本質を理解しておらず、国を誤る危険があるのでもう一度論じることにする。

 問題は排他的経済水域EEZである。日本が主張しているEEZは、日本―中国双方の国境からの中間線である。しかしこの線は、国連海洋法条約からみても国際的に認められたものではない。同様に中国が主張する沖縄トラフまでの線も正当化されたものではない。それはこの条約が、「等距離原則」と「大陸棚原則」の二つについて、どちらを優先すべきかを決めていないからである。
 ということは、日本の主張するEEZと中国の主張するEEZに囲まれた海域はグレーゾーンであって、今のところどちらの国も絶対的権益を主張できない。しかし日本でのマスコミでの報道あるいは議論は、すべて日本のいうEEZが国際的に承認されたものという前提で行われている。これは実におかしなことである。

 中国のガス田開発は日本のいうEEZの外側で行われているのであって、これに日本は異議を申し立てることは出来ない。ガス田が海底でつながっているからけしからんという論理であるが、これは陸上の油田でもあり得ることであって、油田が地下でつながっているからといって、ある国が自国の領土内で油田を掘削するのに、隣国が異議を申し立てられないのと同じである。その異議を申し立てたのは元イラク大統領フセインであった。彼はクウェートの油田は、イラクの油田とつながっているからとクウェートに侵攻した。国際社会はそれを許さなかった。
 今中国がやっていることは、中国の主張するEEZの外側、すなわち沖縄トラフ近くの日本近海で、日本がガス田を開発することと同じである。もしそれに中国が異議を申し立てたら、日本人はどう思うだろうか。
 またもし日本が日本のいうEEZの内側の、現在中国のガス田が設置されているすぐ側でガス田開発を始めたらどうなるか。すでに日本政府は帝国石油にその海域での試掘権を与えている。もし本当に試掘を始めたら、中国は黙っていないだろう。なぜならそれは中国が沖縄トラフのすぐ側で試掘を始めた時の日本の立場に匹敵するからである。すでに中国はミサイルを装備した最新鋭の軍艦数隻をこの海域に遊弋させている。この行為が国際友好的観点からみて、好ましい行為でないことは確かとしても、中国の立場からはそうならざるを得ないだろう。
 
 もしこの問題を解決したいなら、国際的に承認されたEEZを確定することである。国際司法の場での裁定における直近5件が、すべて中間線を採用しているという中川経産相の主張が正しいなら、「大陸棚限界委員会」での裁定も、日本の主張が認められる可能性が高いということだろう。この決着が先で、今のまま両国が突っ張りあっていても両国にとって得られるものは何もない。
 まして日本が、中国に現在のガス掘削を中止せよと要求することは、イラクがクウェートに石油くみ上げを中止せよと要求することと同じ無法行為であることがどうしてわからないのだろうか。それが無法とは思われないほど、日本の言論は偏ってしまっている。こんな状態が続けば、日本国民の対中感情は回復不可能なほど悪化するだろう。その点でマスコミの偏向は、国の方向を誤ることになろう。丁度戦前、軍部の尻馬に乗ったマスコミがそうであったように。

 そもそも東シナ海のガス田は、採算がとれるほどのものかどうかには疑問がある。初めガス田開発に手を貸していた外国企業は手を引いた。採算に疑問があるからという。中国は急増する国内需要に背に腹は替えられず、大消費地上海地区に近いことと、将来の原油・天然ガスの価格上昇を見込んだ上で、採掘に踏み切ったものであろう。
 それに対して日本の立場では、大消費地に遠く、採算をとるのがもっと難しいだろう。せいぜい日中共同開発で、中国に供給することが最も現実的であろう。その程度のガス田のために、日中関係をずたずたにして突っ張りあって何の得になるのか。ささやかなナショナリズムを満足させるために、巨大な国益を犠牲にすることになるだろう。

 今日のサンデープロジェクトで紹介されたVTRでの、元石油資源開発取締役の、政府方針への反対意見を、中川経産相は「けしからん」と切って捨てた。現職大臣が、自分の意見と違った見解をある人が表明することを、「けしからん」と問答無用で切り捨てれば、日本には今後間違った「空気」が醸成され、政府の方針に逆らう奴は「国賊」「売国奴」だとののしられることになるだろう。すでにここで表明しているような意見は、新聞・地上波テレビではほとんどお目にかからない。今日の元取締役の意見は、極めて貴重かつ長期的には国益に叶うものであったと思う。
 NHKの番組に介入して悪いとも思っていない中川大臣のことだから、こんな発言も驚くには当たらないが、反対できないこのような「空気」が、国を誤らせたことへの反省がまるでないようである。関東軍の暴走への批判さえも、それが国益に反するとして、「国賊」とされたようなものである。すでにネット、ある種の月刊誌、週刊誌上では、そんな「空気」が満ちあふれている。
9月2日、本blogに載せた「『空気』の恐ろしさ」を合わせ読んで頂ければ幸甚である。

23:56:20 | archivelago | | TrackBacks
Comments

自由 wrote:

トラックバックさせていただきます。私も猪間明俊さんの主張をベースに記事を書いています。
03/23/06 12:11:25

グリーン・中山 wrote:

『最近の台湾の教科書について 3』

清代勢力図

最近の、台湾の教科書には、4社4種類の教科書に
清代勢力図が記載されていました。

大まかには、以下の2種類にタイプが分かれている様です。

  琉球全体を清代の最大勢力範囲に含む教科書、  2冊
  宮古島?以西を清代の最大勢力範囲に含む教科書、2冊

以下に高級中學(学)や國中(9年一貫の7,8,9學年)の検定教科書の
内容を紹介しています。
(翻訳は大体ですので原文画像もご参考ください。)

  http://www2.ezbbs.net/36/un...
   交流掲示板  4月9日
05/18/06 12:54:15
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