Complete text -- "NHKの民営化絶対反対"

17 December

NHKの民営化絶対反対

 最近NHKのあり方についての議論がにわかに活発になっている。政府の規制改革・民間開放推進会議(議長:宮内義彦オリックス会長)は、NHKの受信料制度の限界と抜本的見直しを、年末にまとめる最終答申に織り込んだ。竹中総務相も有識者懇談会を設置して来年6月までに改革案をまとめる考えという。さらに自民党内にも民営化を睨んだ「NHKを考える会」が結成された。

 発端はNHKの幾つものスキャンダルにからんで、受信料不払いが急拡大したことにあった。このような議論の発展に危機感を持ったNHKは、民営化にも、BS放送のスクランブル化(暗号処理により受信料を払った人だけが見られるシステム)にも反対する姿勢を明らかにした。民放連も巨大民間放送の誕生による経営圧迫を心配して、民営化反対を表明した。

 しかしこの問題においては、NHKや放送業界、あるいは政治家の思惑とは全く別に、NHKが作ってきた番組を、民放と比較してどう評価するかが最大のポイントだと思う。恐らく視聴者は、NHK支持者と不支持者に真っ二つに分かれるかも知れない。NHKなんか観ないという人も結構多かろう。しかし筆者のようにテレビそのものをそれ程観ない上に、民放番組は、特定のニュース番組や討論番組以外ほとんど観ない人種もいる。
 なぜなら民放の番組の多くは実にくだらないからである。そんなものに時間を割くほど人生は長くない。かつて「一億総白痴化」と称された民放番組の質が、その後よくなったとも思えない。それに対してNHKは、素晴らしいドキュメンタリーや、国民に考えさせる番組を相当数作ってきた。その意味でNHKと民放は放送界で住み分けてきたのである。それは様々な大きな問題を孕みながらも、NHKが公共放送としての矜持をまだ失っていないことと、潤沢な受信料に支えられてきたからである。
 それを民営化したときにどうなるか、考えただけでもぞっとする。それこそNHKも番組の質より、視聴率を高めることに重点を置かざるを得ないだろう。それだけではない。NHKもアメリカと同じように、巨大資本の傘下に収まる可能性だってある。そうなれば頼りないながらも、公共放送としてなくてはならない役割を果たしているNHKは消え失せる。
 確かにNHKは巨大すぎ、民放の向こうを張って娯楽番組にも力を入れてきた。アナウンサーの声の調子や番組の騒々しさまで民放に近づいている傾向が一部見られる。大リーグ中継などは、NHKが大金を払って放送する価値があるのか。こんなものは民放に譲ればよいのである。
 それより通常のニュース番組では取り上げられないが、実は我々に大きな影響を与える出来事が世界中で沢山起こっているのだから、そういう国際ニュースにもっと力を入れるべきである。国内ニュースにしても、その深層を探ればもっと詳細に報道あるいは解説すべき事柄は沢山あるだろう。公共放送として、最も力を入れなければならない番組とは何かを、この際、冒頭述べたNHKがらみのいくつかの会で、徹底的に議論し、その内容を国民にも明らかにして欲しい。
 そのような公共放送は、決して視聴率争いに巻き込まれる愚に陥ってはならない。民営化絶対反対である。

                   (05.12.17)

14:29:00 | archivelago | | TrackBacks
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