Archive for April 2005

30 April

中欧旅行から帰って

 8日間の中欧への旅行から帰ってきた。行く先での楽しみとは対照的に、行き帰りの各11〜12時間の飛行機の中は拷問に近い。
 時差という魔物は、朝、日本を飛び立つと間もなく窓を閉めて室内を暗くさせ、睡眠を強制する。体の方はまだ昼間のリズムに従っているのでとても眠れるものではない。窓の下にはシベリア凍土の変化のある地形・風景が広がっているだろうに、それを見ることも許されない。10時間位経って目的地に着く頃になって、やっと体は睡眠を要求し始める。しかし現地時間はやっと夕方である。従って日本にいたなら徹夜をするだけの時間の覚醒を要求する。
 食事がこれまた昼食なのか夕食なのか夜食なのか、あるいは朝食なのかわからない時間に摂らされる。本でも読んでいようものなら、いきなりグイと、目の前に飲み物のコップを突きつけられる。断ればいいものを、うっかり手に取ってしまうとトイレに行きたくなる。 ところが隣の人が、飲みかけのコーヒーをテーブルに乗せたまま寝込んでいたら、トイレにも行けず、限界まで我慢させられる。
 これは本来の移動能力の200倍もの速度で移動する手段を持った人間への、24時間で1回転する地球という星の報復か。狭い椅子に座らされ、ベルトで縛り付けられて身動きもままならず、生理現象も我慢を強いられる状態は、拷問以外の何物でもない。エコノミークラス症候群になりたくないからと、同行を拒否した妻の気持ちもわかろうというものである。
 それでも好んで拷問椅子に座ったのだろうといわれればそれまでである。確かにそうなのだから。次は写真を添えて楽しかった話をすることにしよう。
 
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18 April

花便り(11)4月の花木3種

1.シジミバナ(バラ科シモツケ属)Spiraea prunifolia
遠目にはユキヤナギに似ているが八重。八重の花では最小の部類。中央がへこんでいるので、漢名は笑靨花(しょうようか)。古く中国から渡来。和名は18世紀の「和漢三才図会」にその小さな花が「蜆の肉の如し」とあるのに基づく。
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2.カリン(バラ科ボケ属)Chaenomeles cinensis
これも中国原産。平安時代にすでに渡来と。雄花と両性花が混在。花の直径約3cm。秋に大きな実がなるが堅くて渋いので食べられない。果実酒、ジャム、ゼリーにする。陰干ししたものを咳止めにする。
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3.月桂樹(クスノキ科ゲッケイジュ属)Laurus nobilis
地中海沿岸原産。雌雄異株。写真は雄花。日本には雌株は少ない。葉はbay leafと呼ばれ、カレー、シチュー、スープのスパイスにする。日本では月の中でウサギが餅つきをすると見立てたが、中国では巨大な桂(モクセイ)を切る男に見立てた。明治時代にこの木が導入されたときに、香りの連想からこの字を当てたとされる。従ってモクセイとは関係がない。古代ギリシャでは、森へのレースで折り取った枝を勝利の冠にした。
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 外国旅行のため約10日間お休み。
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17 April

花便り(10)野草3種

1.ヒゴスミレ(スミレ科スミレ属)Viola chaerophylloides
 スミレといいながら葉だけを見たらとてもスミレとは思えない。エイザンスミレと似ているが、葉の切れ込みはさらに細かい。大陸系のスミレとされる。実際黄山の近くで咲いているのを見た。肥後の名前があるが、本州にも少なくない。
 スミレの権威、橋本保氏の「日本のスミレ」のよると、ヒゴスミレやエイザンスミレの分類学上の取り扱いは、古くから学者の頭を悩ませたものだそうである。
 鉢に植えているとこぼれ種でいくらでも増えていく。まとまるとなかなかのものである。我が家ではもう花が終わりかけている。


2.イカリソウ(メギ科)Epimedium macranthum
 主に丘陵や山裾の樹林に生える。写真は寺院の庭の、石組みの間に生えていたものである。花の形が錨のようだからこの名がある。4枚の花弁に2cmもある距があるからそう見える。三つに分かれた枝にそれぞれ3枚の心臓形の葉が付くのでサンシクヨウソウ(三枝九葉草)ともいうが、漢名の三枝九葉草は別種のものだという。


3.タマノカンアオイ(ウマノスズクサ科カンアオイ属)Asarum tamaense
 冬でもアオイのような葉が枯れないのでその名がある、カンアオイの仲間の一つ。多摩丘陵に多い。カンアオイはギフチョウの食草としてしられる。
 1年に1枚ずつ葉をつけるほど成長も分布速度も極めて遅い。筆者の場合20数年前に8号鉢に植えていたものを地植えにしたが、いまだにその鉢の大きさから出ない。そのため各地で地史的な長時間孤立し、種分化して数多くの地名を冠した種を生じることになった。東海・近畿にスズカカンアオイ、伊勢湾沿岸にアツミカンアオイ、四国にナンカイアオイ、九州にツクシカンアオイ、伊豆のアマギカンアオイなど。
 タマノカンアオイは4月頃、暗紫色の花を葉柄の根元に半分土に埋もれたように咲かせる。葉をかき分けないと見えないことが多い。花は美しさとは縁遠いが、爽やかな芳香を持つ。

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16 April

中田横浜市長殿 その意見には賛成できません

 中田横浜市長は筆者が最も尊敬している政治家の一人である。しかし今日の日本テレビ、「ウェークアップ!プラス」での、現下の日中関係についての意見には賛成しかねる。氏は「日本が反省すべきことがあるとすれば、今まで言うべきことを言ってこなかったということである」と発言した。
 確かに日本は言うべきことを言ってこなかったというのはある意味で事実であろう。しかし言えなかったのは、自ら後ろめたいことがあったからではないのか。後ろめたいこととは、これまで何回となく、「公式には」戦争を引き起こし、中国人民に多大の迷惑をかけたことを首相も天皇も謝罪してきた。しかしそのような建前とは別に、政治家、言論界などが、戦争に対して反省してはいないのではないかと疑われる言動を無数に繰り返してきた。そのために、相手からは「日本は本音では反省していないのだ」と思われてしまっている。
 小泉首相の靖国参拝しかり、日本はアジアの植民地を解放するのに役に立ったという歴史観を持つグループの教科書を検定に合格させたことしかり、卒業式などで君が代・日の丸を強制することを公然と認めていることしかり。その他多くの政治家やメディアの本音発言が繰り返されてきた。これらがすべて中国人の心を逆なでしてきたのである。加害者は忘れても被害者は忘れない。逆の立場であったなら、日本人はどうであったかを一度でも考えたことがあるか。
 確かに日本は戦争を放棄した憲法の下で、戦後60年間、一人たりとも外国人を殺したことはない(北朝鮮の不審船を除いては)。今でも多くの日本人は平和を強く望んでいる。その実情が中国の大衆にほとんど伝わっていない上、相変わらずの反日教育が繰り返され、極めて一方的な情報に基づいて反日の炎が燃え上がっているのは確かである。
 しかし日本がドイツと同じように、まともな歴史認識のもとに、平和への国家意思を近隣諸国に伝えることに成功していたなら、中国といえども、現状のような反日教育をすることには躊躇したはずである。不信がなくならないから、反日教育をしたくなるのである。もし信頼感を醸成していたなら、日本も言いたいことを言えたであろう。その信頼感がない土壌の上に、言うべきことを言うのであれば、それは益々不信の悪循環を招くだけである。
 小泉首相の靖国参拝がなかったならば、日中首脳の交流も続き、交流があれば今回のような過激なデモも起こりえなかった。中国国内の深刻な諸問題、貧富の格差、役人の腐敗などについての不平不満を外国に向ける面もないとはいえないが、この日中関係の悪化の原因を中国にだけ求めるのはことの本質を見誤っている。
 今のような反日デモの暴力沙汰はあってはならないし、それをまともに阻止しようとしない中国当局の態度は、国際的にも非難されて然るべきものである。それに対して毅然として抗議し、賠償を求めるのは当然である。しかしその時同時に、日本の過去の過ちについては謝るべきは謝り、正すべきは正し、誠意を以て正常化への強い意思を伝える態度がなければ対立を深めるだけである。その意思を政府当局に伝えるだけでは足りない。中国の若者に直接、中国のジャーナリズムが伝えない、日本の姿を伝えるためにインターネットも利用すべきだろう。現状が続くなら、日本人にも嫌中感情が蔓延し、取り返しの付かない状況を招くだろう。
 今後日本の経済は、中国、インドなどの成長に依存する所大である。これらの国の成長はプラスの面だけでなく、資源や環境への悪影響も伴ってくる。資源争奪も激しくなるだろう。そんな困難な時代へ向かうに当たって、中国と話し合いもできない関係をつくっておいて、日本は生きて行く道があるのか。一時的なナショナリズム感情に流されて、長期の国益を損なう愚をおかしてはならないのである。
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14 April

花便り(9)

1.カナクギノキ(クスノキ科クロモジ属)Lindera erythrocarpa
高さ15mにもなる落葉高木。雌雄異株。花便り(5)で述べたアブラチャンと同属。葉の展開と同時に開花する点、アブラチャンと異なる。黄緑色の小さな花が10個ほど集まって咲く。その雌花が秋に、放射状に付いた直径6-7mmの果実になって赤く熟す。名前は「金釘」ではなく、成木の樹皮がはがれた模様からの「鹿の子木」がなまったもの。宮崎県椎葉村では大晦日から正月7日まで、いろりの火を絶やさないように燃やす「ひのとぎ」に、カシと共にこの木を使うという。

2.ニワザクラ(バラ科サクラ属)Prunus glandulosa cv. Alboplena
庭の片隅にかぼそい、高さ50cmくらいの木が生えていた。その木に今年初めて花が咲いた。それも実に愛らしいピンクの花であった。蕾の時はシジミバナのような感じであった。名前を調べるのに苦労したが、ニワザクラと判明した。
 室町時代から栽培の記録があるそうである。サクラと名が付いていても、成木でも高さ1.5mくらいにしかならないという。狭い我が庭では好都合である。今日この種にしては大きい、幹の直径3cmくらいの木を近くの家で見つけた。花の直径1.5cm程度。花色は白か淡紅色。多くは八重で実がならないが、中には一重もあって結実し食べられるという。

3.シロヤマブキ(バラ科シロヤマブキ属)Rhodtypos scandens
もう普通のヤマブキも咲き始めたが、今日初めてシロヤマブキを見つけた。去年の実を付けたまま花が咲いていた。シロバナヤマブキというのもあってややこしいが、属も異なる。本種は1属1種。ヤマブキは葉が互生、花が5弁であるのに対し、本種は葉が対生、花が4弁。しかも花弁の大きさが異なる不整形の花が多い。
 果実は長さ7mmの楕円形で、4個集まって付く。実生でよく発芽するというが、我が家の試みはまだ成功していない。

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