Complete text -- "前原代表では民主党を支持出来ない"
16 December
前原代表では民主党を支持出来ない
民主党の前原代表は米中両国を相次いで訪れた。最初に訪れたワシントンでの「民主党の目指す国家像と外交ビジョン」という講演の内容には驚かざるを得なかった。それは自民党以上にアメリカべったりで、対中国強硬発言、憲法改正、シーレーン防衛、集団的自衛権にまで及び、民主党内からも異論が続出している。もともと前原氏の安保防衛に関する考えは、自民党防衛族と全くと言っていいほど一致しているとされていた。むしろ彼らより右だという見方もあった。だからこそ代表就任挨拶に訪れたとき、小泉首相に「前原さんなら今すぐにでも閣僚に出来る」とおだてられたのか、皮肉られたのかわからない挨拶をされている。最近は首相や武部幹事長あたりから盛んに民主党との大連立構想が流される。これは憲法改正を睨んだ動きに違いない。
次いで訪れた中国では、米国での講演を巡って中国側の警戒感は強く、共産党指導部との会見は実現しなかった。小泉首相の靖国参拝問題で、日中間の首脳交流が途絶えている時期で、野党代表としては日中間の関係修復に一役買う絶好の機会であったにも拘わらず、唐家璇前外相と戴秉国・筆頭外務次官が対応しただけであった。過去鳩山由紀夫、菅直人の両代表は、それぞれ江沢民、胡錦涛国家主席と会談しているのと比べれば、中国側の対応は極めて異例といわなければならない。
前原氏は米国では「中国の軍事力増強は現実的脅威」と述べたのに対し、中国での講演では「中国を軍事的な脅威と見なす声が増えている」とトーンダウンさせた。時と場所で言い方を変える人間は信用されない。講演会場からも「中国が現実的な脅威という見方は、民主党の立場なのか」などの質問が相次いだ。対応した戴次官も、講演原稿を横に置いてどういう意味かと問いただし、「敵視されているようだ。中国側の気持ちに配慮して欲しい」と抗議した。
このような結果は前原氏に外交センスがいかに欠けているかを如実に示すものである。とてもじゃないがこんな人物に首相はつとまらない。靖国参拝を止めない小泉首相でさえ、「中国の発展は脅威ではなく、日本にとってチャンスである」と言い続けている。タカ派を自認する麻生外相でさえ、「中国の台頭を歓迎したい」と語っている。これでは小泉首相あるいは自民党との外交手腕の違いを示し、野党外交の成果を誇るどころか、益々日中間の離間を大きくしただけである。
前原氏の米国での講演内容は、自民党政権も踏み出さなかった米軍との共同軍事行動まで想定している。憲法改正はそれが出来るようにするためだとさえ受け取れる。こんなことが民主党内で合意されているとはとても思えない。議論されたという話も聞かない。一体彼は民主党をどういう方向へ持って行こうとしているのか。
旧社会党出身者たちからだけでなく、小沢氏一派、鳩山氏、菅氏らが、相次いで苦言を呈している。特に菅氏のホームページでの苦言、「昨今の言動が、自民党と差がなく、二大政党としての存在理由がなくなっているという多くの人の指摘に、前原代表自身、真摯に耳を傾けてもらいたい」というのは、党員だけでなく、これまで民主党に期待してきた多くもない国民の気持ちを代弁しているように思われる。
筆者は10月に「前原氏が民主党の党首に選ばれたことが、党にとってではなく、国民にとって正しい選択だったかどうか、問われ続けることになるだろう。」と書いた。ここに来て、その選択は不毛であったと断じざるを得ない。前原氏は自分なりの信念に基づいて行動しているのだろうから、簡単に自説を曲げるはずもなかろう。そうならば取り巻きを連れてさっさと自民党に移るか、自民党より右の政党を作るしかないのではないか。少なくとも民主党に期待する国民の多くとは、進むべき方向が逆になっているというべきだろう。
(2005.12.16)
14:27:00 |
archivelago |
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