Archive for 10 February 2006
10 February
「めぐみさん遺骨」についてのやりとりの詳細を知りたい
ちょうど1年前、本blogに「DNA鑑定へのぬぐえぬ疑問」という文章をアップした。それは横田めぐみさんのものと称する、北朝鮮が渡した遺骨に関するDNA鑑定が、別人のものと結論したことへの素朴な疑問を提出したものであった。この判定に関しては、有名なイギリスの科学雑誌「Nature」(05.2.2)も、別人のものとの結論は出せないのではないかという見解を発表している。窒素ラヂカル子はNatureとは全く別の理由によって、別人のものとの結論に疑問を提出したものであった。簡単に言うと、遺骨は高温にさらされたものであって、そのDNA(ミトコンドリアDNAとされる)が、高温で変性していないことを証明しない限り、対照としためぐみさんのDNAと異なるDNAがあったとしても、それが別人のDNAとは断定できないはずだというものであった。
不思議なことに、政府はさらに第三者の鑑定を仰ぐことも拒否し、また鑑定者の帝京大学の吉井富夫講師も、その事件の詳細を全く明らかにしようとしない。果たしてその実験や考察が学問的な批判に耐えるものなのかどうか、闇に葬られたままである。そして結論だけが一人歩きし、「北朝鮮は別人の骨をめぐみさんのものだとでっち上げた、実にけしからん国だ」という世論が、岩盤のように作り上げられた。
英科学誌「ネイチャー」はさらに、その鑑定結果と鑑定した同大の吉井富夫講師(当時、現警視庁科学捜査研法医科長)の処遇に関わる疑惑を相次いで報じている。同誌05年4月7日号は、科捜研が吉井講師を管理職として採用したことは「吉井講師を発言させないように囲い込むためだったのではないか」とも指摘した。
従って今回の日朝交渉で、北朝鮮がいわゆる「めぐみさんの遺骨」についての結論にどのような科学的な論拠を持ってくるか、そして日本側がそれに科学的に反論できるかには大きな興味があった。北朝鮮はこの「遺骨」問題で専門家協議を提案したらしいが、日本側は回答もしなかったという(日経2月9日)。また日本政府はこの遺骨がめぐみさんのものでないと確信があるのなら、めぐみさんの遺族に返還すべきだという北朝鮮の主張に応じてもよさそうなのに、そのつもりはなさそうである。
どうもはじめに結論ありきの日本政府からは、その詳しい議論について発表される可能性は小さいだろう。現にマスコミで報じられたとも聞かない。どうもこの問題での日本政府の立場は、振り上げた拳のやり場に困っているようにも見える。「遺骨はにせもの」と早々と結論づけた日本政府の態度はあまりにも軽率であったといわざるを得ない。同様にその結論を鵜呑みにして報道したマスコミも同罪であろう。
22:42:13 |
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