Archive for 15 September 2005
15 September
花便り(96)秋の七草
今日ようやく秋風が立った。季節は確実に移って秋の七草もフジバカマを除いて咲き揃ったようだ。現在では秋の七草は萩、尾花、葛花、撫子、女郎花、藤袴、桔梗を指す。万葉集でいう朝貌は今日では桔梗を指すものと考えられている。
1.萩
七草の萩はヤマハギ Lespedeza bicolor を指すと見られている。日本全土、朝鮮半島、中国、ウスリーに分布する。枝はほとんど枝垂れない。葉は3出複葉、小葉は長さ3〜4cmの広楕円形または広倒卵形で先は丸い。葉の腋から葉よりも長い花序を出し、紅紫色の蝶形花をつける。05.8.23撮影。
最もよく栽培されているミヤギノハギ L. thunbergii は、枝が地に着くほど枝垂れ、葉の先端が尖っているので区別できる。マルバハギ L. cyrtobotrya は、枝は枝垂れず、葉の先端も丸いが、花序が葉より短い点が異なる。
雨風や 最も萩を いたましむ 虚子
2.尾花(ススキ、カヤ)(イネ科ススキ属) Miscanthus sinensis
ススキ属には、似たような植物があって、正確に区別できる人は少ないかも知れない。間もなくやってくる中秋の名月の月見にも欠かせない。箱根のススキの原は有名である。04.10.7撮影。
打ち靡く 薄ばかりの けわしさよ 中村草田男
3.葛花(クズ)(マメ科クズ属) Pueraria lobata
夏、野原や堤防に壮大に葉を茂らせる。その葉で光合成された澱粉が太い根に蓄えられて人はそれを葛粉として利用してきた。その植物体の大きさに比べれば、紅紫色の花はそれ程目立つものではない。05.9.12撮影。
天狗風 残らず葛の 葉裏かな 蕪村
4.撫子(ナデシコ科ナデシコ属) Dianthus superbus
ナデシコも交雑化が進んで、どれが古来のナデシコなのかよくわからない。ナデシコと確信持てる写真がないので、ここではカワラナデシコ D. superbus var. longicalycinus の写真を示す。
重ねとは 八重撫子の 名なるべし 曾良
5.女郎花(オミナエシ)(オミナエシ科オミナエシ属)Patrinia scabiosaefolia
分布は東アジア。高さは1mほど。
ひょろひょろと 尚露けしや をみなえし 芭蕉
6.藤袴(キク科フジバカマ属) Eupatorium fortunei
中国から奈良時代に渡来。今や絶滅危惧種2類。昔は河川敷など水気の多い場所にいくらでもあったらしいが、河川敷がコンクリートに固められたり、外来種のセイタカアワダチソウやオオブタクサに駆逐されたものと思われる。所によってはフジバカマを自然に帰す運動をしているところもある。しかし鉢植えで育てていると、水切れに極めて弱いことがわかる。乾燥葉はクマリンを含み、唐の時代には香草として重用された。今年はまだ咲いていないので、我が家で撮った質の悪い写真を示す。03.10.16撮影。
藤袴 手に満ちたれど 友来ずも 橋本多佳子
7.桔梗(キキョウ科キキョウ属) Platycodon grandiflorum
キキョウはすでに出したことがあるが、あらためて。05.7.7撮影。
みちのくの 雨そそぎいる 桔梗かな 水原秋桜子
18:25:43 |
archivelago |
|
TrackBacks