Archive for 16 July 2005

16 July

どこまで広がるアスベスト公害

 クボタによる社員及び近隣住民の中皮腫による死亡数の公表以降、多くのアスベスト製品生産工場での患者数の発表が相次いでいる。そしてその被害の拡がりの深刻さが懸念されている。
 何しろ日本はアスベストの消費大国であり、1970年から90年初頭までが輸入のピークであった。この期間、年に30万トン前後が輸入されており、03年でさえ2.5万トンが輸入されている。アスベストはその耐熱性、耐火性、断熱性、遮音性が極めて優れ、戦前からありとあらゆる製品や場所に使われてきた。昔のかまどや風呂の煙突、屋根や壁のスレート材、水道管はアスベストとセメントで出来ていた。天井や壁の断熱、防火、吸音のために建築物には広く利用されてきた。化学工場などの配管の断熱にもアスベストが大量に使われているはずである。
 学校、公共建築物、マンション、個人用住宅には、アスベストが今でも大量に残っている。ロック演奏会が行われる日比谷公会堂の天井はアスベストだそうである。大音響と共にアスベストの塵が舞っているのかも知れない。
 阪神大震災で倒壊して撤去された建物には、大量のアスベストがあったはずである。今後東京などの大都市で大地震があったなら、それこそアスベストの粉塵が舞うだろう。今後建て替えられる建築物からのアスベストの飛散をどう防ぎ、どう処分するかも大問題である。
 アスベスト製品を作っていた工場の社員だけでなく、下請け作業者、その製品を扱った建築現場などで働いていた人の数は、それこそ数え切れないだろう。すでに症状が出た人、死亡した人だけでなく、潜在発症危険者がどれ程いるかも問題だが、これからその危険にさらされる人も膨大な数になるに違いない。
 これまで水俣病、血液製剤によるエイズ、ハンセン病など、行政および立法府の不作為と怠慢が被害を拡大してきた。アスベスト被害でもまた同じことが繰り返された。旧労働省が本格的に禁止を始めたのはWHOが危険性を断定してから15年も経っていた。最終的に使用禁止にしたのは去年のことである。今度もまた環境省はアスベスト被害を「公害」とはしたくないようである。しかし被害の場所が工場とは限らないことから、「労災」と考えることは被害者の救済に齟齬をきたすことになるだろう。
 こういう問題に対して政治がとろいのは、いつになったら直るのだろう。
22:57:07 | archivelago | | TrackBacks