Archive for May 2005

30 May

花便り(28)アジサイ科

 間もなく梅雨に入る頃になればアジサイの色がさえるようになる。その前にアジサイ科の花が色々咲いている。アジサイ科は以前はユキノシタ科に属していたが、最近ではその中の主として木本をアジサイ科として独立させる考えが有力になってきた。ここでもそれに従ってアジサイ科として取り扱うことにする。

1. アマチャ(コアマチャ)(アジサイ属 Hydrangea macrophylla Seringe subsp. serrata Makino var. Thunbergii Makino)
周囲の装飾花は初め淡紫色、のち淡紅色に変わる。アマチャの仲間は葉を乾燥させると、フィロヅルチンという物質ができてきて甘くなる。甘茶は4月8日の花祭り(灌仏会)の日に、水盤の中に安置された釈迦像に注ぎかける。これは釈迦が誕生したとき、右手を空に向け、左手で大地を指すと、竜王が空にあって香水を振りかけ、洗浴したという伝説によるものである。幼い子供の頃ただ一度だけ、近所の寺の灌仏会で甘茶を飲んだ覚えがある。
 花祭りで思い出すことがもう一つある。ある学会でアメリカの有名な学者が招待講演の冒頭、「春爛漫、時あたかもお釈迦様の誕生日のこの日、特別講演の機会を与えられて・・・」と日本語で挨拶したものだから会場がどっと沸いたことがあった。


2. マルバウツギ(ウツギ属 Deutzia scabra Thunb.)
花も葉もウツギによく似ているが、葉が少し丸く、花序のすぐ下の葉が無柄であることが特徴。この写真でもよくわかる。


3. ガクウツギ(アジサイ属 Hydrangea scandens)
ウツギの名はあるがアジサイの仲間。装飾花の萼片は通常3個だが、写真のように4個のこともある。中央の両性花の直径は5mmほどで黄色。


4. ノリウツギ(アジサイ属 Hydrangea paniculata)
まだ咲いていなかったが、長さ8〜30cmもある円錐花序を出す。装飾花の萼片は3〜4個。両性花も白色。


5. イワガラミ(イワガラミ属 Schizophragma hydrangeoides)
枝先に直径10〜20cmの散房花序を出す。装飾花は白色で萼片が1個。


6. バイカウツギ(バイカウツギ属 Philadelphus satsumi)
枝先に集散花序を出し、白い花を5〜9個つける。花弁は通常は4個、長さは1〜1.5cm。雄しべが花弁化した八重もあり、その変化の過程がしばしば観察される。ここに示した写真は我が家で3年前に移植後、樹勢が衰えて去年まで花が咲かなかった木に、今年は嬉しい復活開花となったものである。清楚な花姿が実に好もしい。
 なおウメウツギ(ウツギ属)とウメザキウツギ(バラ科ヤナギザクラ属)という酷似した名前があるが、それぞれ別種である。

18:08:36 | archivelago | | TrackBacks

28 May

花便り(27)今頃のロウバイ

 ロウバイ(ロウバイ科ロウバイ属 Chimonanthus praecox)といえば早春の花の代表である。1月から咲き始める。そして今どうなっているかといえば、写真のような実になっている。まるで出来損ないの桃のようである。これは偽果で、中にゴキブリの卵そっくりの痩果が5〜20個入っている。


 昨日30年ぶりに小石川にある東大付属植物園へ行ってきた。もう花木の花はほとんど終わっていたが、やはり他では滅多に見られない花を見ることができた。そこで夏咲きのロウバイがあることを知った。ナツロウバイ(Sinecarycanthus chinensis)という。もう枯れかかっていたので、写真から縁の茶色を除いてイメージして欲しい。春咲きの黄色いロウバイとは印象がまるで違って、白色で花はずっと大きく直径5cmはあるだろう。この植物は手持ちの図鑑には載っていない。比較的最近中国から渡来したらしい。鎌倉名月院に沢山あるとのこと。


 それより早く、近くの公園でアメリカロウバイ(クロバナロウバイ)(クロバナロウバイ属 Calycanthus fertilis)を見つけていた。北アメリカ東部原産。明治中期に渡来したという。これもロウバイとは属が違って随分と色も形も印象が違う。花期は5〜6月。


22:20:41 | archivelago | | TrackBacks

26 May

花便り(26)センダンの花

 センダン(センダン科センダン属、別名オオチ)Melia azedarach var. subtripinnataの花が咲いている。センダン科は世界的には51属もある大きな科である。高級家具材であるマホガニーもセンダン科。しかし日本ではセンダン属だけ。「栴檀は双葉より芳し」の栴檀は、香木である白壇の別名で、ここでいうセンダンとは関係がない。

 子供の頃、近所に二本のセンダンの木があった。夏の午後、クマゼミが列を作って昼寝をする(クマゼミは午後には絶対に鳴かない)ので、蝉取りには絶好の場所だった。しかし不思議なことに花の記憶が全くない。黄色い実はよく覚えている。蝉のいないセンダンの、高い梢にまで子供の目はいかなかったものか。
 
 今見ると5弁星状、淡紫色の花は結構綺麗である。果実は薬用、樹皮も駆虫剤にする。核は数珠玉になる。秋、葉が落ちても実は長く枝に残る。

17:34:48 | archivelago | | TrackBacks

25 May

花便り(25)今時のモクレン科

 早春を彩ったコブシ類、ハクモクレン、シモクレンなどのモクレン科の花は終わったが、5月の今咲くモクレン科もある。ただそれに出会うのはかなり難しい。
ホオノキ Magnolia hypoleucaもその一つであるが、大木なので大きな公園にでも行かないとお目にかかれない。一昔前には近所にもあったが、そこは住宅地になったためなくなった。
 タイサンボク M. grandifloraの花にはちょっと早いかも知れないが、これを見る機会もなさそうである。昔通った小学校の門を入ると、左側には奉安殿(今では死語。ご真影や教育勅語謄本などが納められていて、門の出入りの度に最敬礼をしていた)、右側にはタイサンボクの大木があった。花が散る頃には強い香りと共に、大きな杓子のような花びらが沢山落ちてきた。

 今日最初の写真はオオヤマレンゲ M. sieboldii ssp. japonicaである。花はやや下向きに咲く。外側の花被片3個は短い萼状、内側の6〜9個は花弁状。花糸は赤、葯は淡緑黄色で非常に美しい。日常の家から2km以内の行動範囲ではただ一本しか見つかっていない。


 次の写真も珍しい花である。カラタネオガタマ(唐種招霊) M. figoという。中国原産。高さ3-5m位の小高木。直径3cmほどの花が葉腋に1個ずつ付く。バナナに似た強い芳香がある。花被片の縁が紅色を帯び、内側に紫紅色のぼかしがいる。この木も今のところ1本しか見つかっていない。

23:30:43 | archivelago | | TrackBacks

24 May

花便り(24)卯の花の季節

 卯の花の 匂う垣根に
 時鳥 早も来鳴きて
 忍び音もらす 夏は来ぬ

 まだ夏が来たという感じには遠いが、今年も卯の花(ウツギ、ユキノシタ科ウツギ属 Deutzia crenata)が咲く季節になった。ウツギは空木の意味で、茎が中空であることから名付けられたが、旧暦4月、卯月に咲くから卯の花ともいうとされている。歌詞では匂うことになっているが、実際は匂わない。普通は5弁の一重であるが、八重もある。


 
我が家にあるサラサウツギ( D. crenata f. plena)は八重で花弁の外側が紅紫色を帯び大変美しい。

 
もう盛りを過ぎたが、ヒメウツギ(D. gracilis)も同属であり、我が家でも株立ちになっていて溢れるように咲いていた。ウツギが高さ2m位になるのに対し、ヒメウツギは1m位である。花自身の大きさはそれ程違わない。葉裏に毛がない点で他のウツギ類と区別できる。花の時期も他のウツギより早く、4月から咲く。

21:31:32 | archivelago | | TrackBacks