Archive for May 2005

29 May

無残なNPTの崩壊に金正日の高笑いが聞こえる

 国連本部で開かれていた核不拡散条約(NPT)再検討会議が、3委員会とも決裂し、合意文書もまとめられないで閉幕した。
 
そもそもNPTは、核保有国にはそのまま保有を認め、それ以外の国には核開発を禁止するという、極めて非対称な、いってみれば不平等な条約である。従って核保有国も積極的に核軍縮に取り組む姿勢を示さなければ、保有国と非核国との話し合いは成立しない性格のものである。それなのに最大の核保有国アメリカは、徹頭徹尾自国の勝手な論理を主張し続けた。
 会議期間中にペイン元国防次官補代理が発表した論文は「米国の核抑止力の信頼性を維持することこそが核不拡散のために最も重要なことだ」と主張する。そして自らは、「地中貫通型小型核兵器」つまり「使える核兵器」の開発に進もうとする。またほとんどの国が早期発効を望んでいる包括的核実験禁止条約(CTBT)をかたくなに拒み続ける。
 このような政府の態度に対しては、米国内にさえ批判がある。マーキー下院議員が「酒場の止まり木に座ったまま禁酒を説くなんて、土台、無理な話だ」とまで言い切った。核保有国の軍縮義務の実行を早める決議案も提出されている。

 いかにNPTが存在しても、NPT非加盟のイスラエル、インド、パキスタンは核保有国になり、それについてはおとがめなし。いままたイラン、北朝鮮が核開発の疑惑を持たれている。NPT会議のこの惨状を見れば、NPTから脱退した北朝鮮はそれ見たことかと、高笑いしているだろう。一旦核を保有すれば、イラクのように侵略されることはないと考えているに違いない。イラン、エジプトなどの態度もひどかった。合意しかけた文書に一々いちゃもんを付けた。その背景には、アメリカの独善性に引きずられてなるものかという非核国の反発があった。

 重要な国際会議がこのように収拾がつかなくなれば、今後の世界秩序に重大な懸念が生じる。その責任の多くは、唯一の超大国アメリカが負うべきだろう。アメリカが良識の国に変わらない限り、世界に真の平和は訪れない。
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28 May

岡田さん 本当に今の方針でいいの

 与党と共産党、それに田中真紀子氏だけでの郵政民営化法案の審議が始まった。民主党と社民党は本会議も特別委員会も欠席したままである。法案は審議に値しない欠陥法案だという言い分だが、国民には非常にわかりにくい。欠陥があるのなら審議過程でその欠陥を徹底的に国民の前に明らかにしたらいいではないか。まさか国会会期一杯欠席するわけではあるまい。
 最近の民主党の採る戦術にはわかりにくいものが多い。何でも反対の野党とは違って、自ら対案を出していくという方針ではなかったのか。それがいつの間にか、単なる抵抗野党に逆戻りしてしまったのか。支持勢力の労働組合に遠慮して、対案も出せないというのか。どうも右に左に揺れ続けて、民主党のよって立つ姿勢が国民にはわからない。これでは支持率が伸びないのは当然である。
 党内に考え方の違う勢力を幾つも抱えていて、執行部はそのバランスに気を遣いすぎ、しっかりした方針が出せないのか、それとも執行部の判断力が不足しているのか。今度の法案では、自民党内部の対立も深刻で、野党がうまくやれば自民党を分裂に追い込むことさえできたかも知れないのに、欠席したままでは何の手だても打てないだろう。
 何か復帰のきっかけを探っているのかも知れないが、途中からのこのこ出てきたらカッコ悪いよ、岡田さん。
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23 May

「馬鹿は死ななきゃ直らない」か

 来日していた中国の呉儀副首相が、今日予定されていた小泉首相との会談を突如キャンセルして帰国してしまった。「国内における緊急の公務が生じたため」と説明されているが、それを信じる人はいないだろう。明日の大連経由のモンゴル訪問は予定通り行うというのだから。
 明らかに小泉首相の16日の予算委員会での「靖国発言」への強い不快感を伝えるためだろう。一国のトップとの会談をドタキャンすることは、普通にはあり得ず、極めて非礼だといわれても仕方がない。それにも拘わらず、中国がそれを敢えてしたのは、首相の態度に腹を据えかねているからに違いない。
 首相は「どの国でも戦没者への追悼を行う気持ちを持っている。どのような追悼の仕方がいいかは、他国が干渉すべきでない」「A級戦犯の話がたびたび論じられるが、『罪を憎んで人を憎まず』は中国の孔子の言葉ですよ」と言った。中国首脳は、小泉首相にも、また与党幹部にも、しばしば首相の靖国参拝を取りやめるよう要請してきた。首相の「適切に対処する」という言葉から、中国首脳が得ていた感触は「参拝取りやめ」ではなかったか。それが予算委員会での発言で全く裏切られたと感じたに違いない。

 これまでも窒素ラヂカル子は、靖国問題は他国との関係以前に、自国の問題であることを繰り返し論じてきた。靖国神社は戦前陸海軍が所管していた「国策神社」であり、軍国主義のシンボルであった。しかもA級戦犯の合祀、宮司の思想、遊就館の展示に示されているように、その体質は現在も全く変わっていない。
 「二度と戦争を起こさないことを祈願する」のに、これほどふさわしくない存在はない。その神社に参拝することが、かつての被害国にどんな感情を抱かせるか、普通の人には容易に推測できることである。それでも首相は「いまだに批判される理由がわからない」という。どこまで馬鹿かとしかいいようがないではないか。

 日本と中国は「戦争の歴史」をいわば共有している。その「歴史認識」が国内問題にとどまれないのは明かである。「外国に干渉されるいわれはない」という主張は意味を持たない。いくら首相が「バンドン会議」50周年記念会議で、村山談話を引用してみても、同じ日に現職閣僚を含む80人の国会議員が靖国を参拝してはすべてが空しくなる。どうしてこんな愚かな行為を続けるのか。それが日本にどんな利益をもたらすというのか。腹が立つことおびただしい。
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20 May

法律が悪いのか裁判官が悪いのか

 18日の東京高裁は、票格差が5.13倍となった昨年7月の参院選の定数配分を違憲として、東京、神奈川、千葉の3選挙区に住む弁護士11人が起こしていた訴訟で、請求を棄却した。
 最高裁も含めて、裁判所はいつまでこんな馬鹿な判断を示すのか。法律が悪いのか、裁判官が悪いのか。民主主義の基礎は、誰もが平等な選挙権を行使することであるはず。それを5倍以上の格差があっても「到底見過ごすことができない程度に至っているとはいえない」というアホな結論がどうして出てくるのか。
 外国では格差が2倍以上にならないように是正することは常識である。確かにいまの県単位では、定数を人口比で割り振れば、3年ごとの選挙で選挙ができない県が出てくる。それなら県を合併しても、定数是正をするのが正当ではないか。判決は「立法府が果たすべき責務を放棄し、漫然と状況を放置しているとはいえない」とも述べた。戦後民主主義が始まって60年にもなるというのに、いまだにこんな許し難い格差を放置しているのが、どうして怠慢でないといえるのか。
 過大な地方議員の数がその是正を阻んでいるのであろう。それなら司法がそれをチェックするのが三権分立の精神であろう。それもできない司法とは一体何なのか。余りにも政治に遠慮する司法は、自らその価値を下げているのではないか。諫早干拓差し止め訴訟での高裁の判断にも同じことがいえる。
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