Archive for 11 April 2005

11 April

花便り(7)「カタカゴの森に咲く花」

1.カタクリ ユリ科カタクリ属 Erythronium japonicum
  本州、北海道、サハリン、朝鮮半島、稀に四国山中に産する多年生草本。古くはカタカゴ(堅香子)と呼んだ。 
 「もののふの八十(やそ)おとめらがくみまがふ 寺井の上の堅香子の花」
                 (万葉集 巻19)
 昔はこの鱗茎から澱粉をとり、それを片栗粉と称した。(今の片栗粉はジャガイモ澱粉) また若葉をおひたしなどにして食べたという。昔はそれほどふんだんに生えていたのだろう。
 関東平野でも落葉樹林の中に生えていることが多い。まだ木々の葉が茂らない早春に葉を出し、花をつける。葉が茂るまでの短い期間に急いで光合成をして、澱粉を蓄えるのだろう。種から花を咲かせるまでに約8年かかるといわれる。埼玉県では準絶滅危惧種に指定されている。
 「静原の山辺の森の下かげに ほのぼの咲ける片栗の花」 (新村 出)
 「かたくりに 残りし雪の いつ消えし」 (新井 石毛)
 各地で保護活動も盛んで、ボランティアが開花期に限って、解放しているところもある。この写真もそういう場所で撮ったものである。色といい形といい、実に魅力的な花で、ファンも多い。稀に白花があるという。
 カタクリ属は北米に十数種分布し、その中には黄色のキバナカタクリがある。

2.シュンラン ラン科シュンラン属 Cymbidium virescens
早春に開花。一茎一花。野生種のほか、黄花、紅褐花、斑入りなど変異種が多く、極めて高価なものがある。毎年の世界ラン展にも、優良花が出展される。花を塩漬けにする。
 「春蘭の 清げなそれの 忘らえず」 (細矢 喜代子)
 
3.クサボケ バラ科ボケ属 Chaenomeles japonica
学名通り日本原産。花は両性花と雄花が混じるという珍しい花。

4.ニリンソウ キンポウゲ科イチリンソウ属 Anemone flaccida
原則は1茎2花であるが、1輪の時も3輪の時もある。花弁と見えるのは萼。今年は花が遅れ、2輪揃って咲いているのは見つからなかった。写真では2輪目が蕾として見えている。
 「花に添ふ 低き蕾は 二輪草」  石田あき子
 「一花咲き 一蕾添へり 二輪草」 新村 寒花
 イチリンソウもこの場所にあるらしいが花はまだ見えなかったのは残念。

5.ワチガイソウ ナデシコ科 Pseudostellaria heterantha
10個のおしべの内、5個の葯が花弁の上に斑点のように見えている。葯の色が紫である点、茎途中の葉腋からも花茎を伸ばす点が、黄色葯で、頂部葉腋から花茎を出す、近縁のワダソウと異なる。この花とは別に下部の節から閉鎖花を出す特徴はワダソウと似ているが数は少ない。

6.ハナイカダ(花筏) ミズキ科ハナイカダ属 Helwingia japonica
 葉の真ん中に花を咲かせるけったいな植物。雌雄異株。展開し始めたばかりの葉の真ん中に早くも小さい花芽をつけていた。花は1個のようなので雌花であろう。雄花は一カ所に数個付く。
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