Archive for 02 March 2005

02 March

ホリエモンは勝てるか

 ライブドアとフジグループとの間のニッポン放送をめぐる争いは、仮処分審尋の最中である。結論が出るのは近いだろう。裁判所がどういう結論を出すかについては、専門家も判断を避ける傾向がある。
 しかし結論はむしろ予想しやすいのではないか。フジグループとニッポン放送が発表した新株予約権発行は、明らかに「経営権の維持保全を目的とした増資」を禁じた商法の規定に違反する。ニッポン放送は、企業価値の低下を抑える措置だとしているが、ライブドアの子会社になったときに企業価値が低下するという言い分は説得性に欠ける。また株式を取得できる価格5950円が、時価6800円より
1割以上安いのは、株式総会での2/3以上の賛成を要する特別決議を経ていないのだから、「有利発行」である疑いも濃い。
 今回のような新株予約権発行が許されるなら、どんなひどい経営者でも乗っ取りに対して完全防御が可能になる。いくら何でも裁判所はこれを合法とは判断しないだろう。
 ただし今回の問題の発端であるライブドアによる「時間外取引による株取得」が、そもそも違法ではないかという見方がある。結論は裁判所がここをどう判断するかにかかってくるだろう。政府・与党はあわてふためいて、今国会で「株式の三分の一超を時間外取引で取得することを禁じる」法改正案を提出するらしい。これは逆にいえば、ライブドアの株取得の方法は、法の盲点をついたやり方、
つまり脱法行為ではあったが、違法ではなかったことを意味するだろう。
 もう一つライブドアが資金調達のために発行したリーマン・ブラザーズ引き受けの転換社債が、やはり「有利発行」に当たる疑いもある。
 以上の点を総合的に判断すると、やはり裁判所は新株予約権発行を差し止める仮処分を出すのではないか。しかし裁判はこれで終わらず、本訴となって最高裁まで争われることになろう。その過程でライブドア側の株取得法の正当性の判断も下されるだろう。

 以上問題の法律面だけを議論した。世の中の議論は、法律問題と堀江社長の経営スタイル、はては彼の人生観や服装まで、ごっちゃにして論じていることが多い。2月27日のサンデープロジェクで、30分にもわたって田原総一郎が堀江社長にインタビューしたが、その論点整理が全くできていなかった。
 上の法律問題(法の不備も含めて)とは別に、特に政界や財界の有力者が堀江社長の、「金さえあれば何でもできる」という人生観を批判する。自著にもそう書いているらしいが、新聞のインタビュー記事にも、「金でできないことってありますか?」と彼が反問していたのを読んだ。その時「こんな考えではいずれ必ず躓くな」と思った。はやりこれは彼の人生観であろう。
 もう一つ、彼の言葉の中に「今後我々がテレビやラジオを殺していくわけですけど」というのがあった。これが何を意味しているのか明かでないが、ちょっと穏やかではない。彼の言う「ネットと放送の融合」のイメージがほとんどの人に理解されていないと思うが、この点でももっとまともな言葉で説明していく必要があるだろう。
 今回彼が勝利して、実際ニッポン放送を傘下におさめたとき、ニッポン放送の生身の社員が、彼の思うように動いてくれるだろうか。これは日本の風土という特別な問題ではない。国境を越えて人間共通に、人を動かすときに必要な資質・やりかたがある。その点を同じネット企業の一方の旗頭である孫正義氏も批判していた。やはり孫氏の方が大人であり、堀江氏は若いといわざるをえないだろう。
 折角の優れた資質を持つホリエモンに、期待することが大きいだけに、今回の色々な批判を冷静に受け止めて、一層の成長を遂げてくれることを願うものである。
 さらに今回浮かび上がった問題がある。それはメディアに対する外国の影響をどう考えるかということである。この点も重要だが長くなりすぎるので、別の機会に譲ることにする。
18:50:19 | archivelago | | TrackBacks