Archive for August 2005

29 August

小泉首相の討論術は上手か下手か

 今日1時から、新党日本を除く6党党首による討論会を視聴した。この中で小泉首相の討論の仕方だけが際だっていた。よい意味でなく、討論を空洞化させる意味で。この答弁術は国会でも全く同じである。この小泉流が国会の議論を深めず、空洞化の空しさだけを国民に残した。
 彼は質問に対してまともには答えず、いつも論点をずらせる。岡田民主党代表が、首相の答弁の途中「質問に答えて下さい」と度々注意しても、我関せずである。「自民党のマニフェストには、国民年金についての考えが全く示されていないが、どう考えているか」という質問であった。聞いている国民は、当然自民党総裁としての考え方を聞きたかったはずである。それには全く答えず、「国会で与野党一緒に協議しようということになっている」ということを延々と説明する。それだけで民主党の質問時間はなくなってしまった。自分の、あるいは党の考えを示さないのでは、政権を担っている第一党の党首としては失格であるだけでなく、議論の意味さえ無くしてしまう。
 
 自分の考えの空虚さを隠すためには、こういうすり替え答弁は有効かも知れない。国会での議論を、何れ多数による議決までの時間稼ぎととるならば、これが優れた「討論術」「答弁術」なのかも知れない。しかし今日のような討論会は、国民に政策の説明をし、理解をしてもらうためのものである。また国会においても、「討論を、よりよい結論に到達する重要な機能である」ととるならば、こんな「すり替え」「はぐらかし」「詭弁」は、討論参加者や聞き手を愚弄し、民主主義の根幹である、「討議による建設的な結論到達」という目標を妨げるものでしかない。全く時間の無駄である。

 深刻なのは、小泉首相がそのような自分の議論・答弁の仕方に問題があるとは露ほども思っていないらしいことである。今日もかつての「人生色々答弁」が蒸し返されたが、あのどこが悪いのかと改めて開き直った。いや開き直りでもないかも知れない。本当に問題を感じていないのだろう。以前から窒素ラヂカル子が指摘しているように、小泉首相は本当に頭が悪いのではないかと思う。こういう、まともな判断力も持たない首相に「毅然として」「ぶれない姿勢」で暴走されたのでは、国民はたまったものではない。
 自民・公明の過半数割れを切に願うものである。
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24 August

「ぶれない姿勢」は正しい判断力があってこそ

 今回の解散で小泉首相の「ぶれない姿勢」が好感を持たれたのか、内閣・自民党支持率が上昇している。22日の朝日新聞「声」欄にもそんな声が載った。
 確かに政治家の資質として、強固な信念、ぶれない実行力は重要なものだろう。しかしその信念・実行力は、正しい「判断力」に裏付けされていることが不可欠の前提である。間違った判断に基づいた実行は、「蛮勇」をふるった「暴挙」でしかない。それでは国民は迷惑この上ない。その点で小泉首相のこれまでの判断に問題はなかったのだろうか。
 かつて郵政民営化への国民の関心は数%に過ぎなかった。小泉内閣は、より緊急度の高い課題を放置して、郵政一本で突っ走ってきた。しかも廃案になった法案は、賛成者を増やすためとはいえ、妥協に妥協を重ね、「民営化」とは名ばかりになっている。これでは官の特権を残したまま、公社を肥大化させるだけだろう。
 外交的には何の戦略もなく、「誰が何と言おうと、8月15日に靖国に必ず参拝します」という馬鹿げた公約をし、中国・韓国との関係を致命的にまで悪化させた。これが長い将来にわたってどれ程国益を損じるか計り知れないものがある。このことがアジアにおいても日本の存在感を大きく損なった。大金を使ってまで果たそうとした国連常任理事国入りで、インドを除いて、アジア諸国からただ一国の共同提案国をも得られなかったことはそれを示している。
 いまや泥沼化したイラク戦争を無条件で支持した判断も完全に裏目に出た。憲法に触れるほどの無理までして歓心を得ようとした米国は、常任理事国拡大問題では積極的にG4案をつぶしに動いた。その結果、あれほど「日米蜜月」と持ち上げられていた小泉ーブッシュ関係は、サミットでも個別会談さえ出来なくなった。
 こう考えてみたら小泉首相の判断力にはとても合格点を上げられない。今の段階では、劇場化した政局に国民はすっかり惑わされているようである。マスコミが「刺客だ」「新党だ」と騒ぐのに乗せられて、政権選択のための争点がすっかり霞んでしまった。有権者は小泉の「ぶれない姿勢」が何をもたらすか、頭を冷やして誤りない一票を行使したいものである。


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15 August

敗戦60周年

 今日は戦争に敗れてから60年目である。どうしても書いておかなければならないことがある。
 60年前のあの日も暑い日だった。中学1年半ばのあの日、1年生は疎開を兼ねた山の開墾のため、山の中へ行くために布団などの荷物を学校へ持って行く日だった。重大放送があるので是非聞くようにという通達があって、近所の人達がラジオのある我が家に集まっていた。
 ラジオは雑音で聞き取りにくく、天皇の言葉の難しさもあって、多くの人は意味を掴めなかった。しかし父は「負けた」とはっきり理解したようだ。負けたと聞いた隣の人がそんなことはないと抗議に来たこともあった。
 
 いつか必ず日本のために神風が吹くと信じ、自分も必ず戦争に行って死ぬと覚悟を決めていた軍国少年にとって、日本が負けるなどとは信じられないことだった。戦後間もなくの修身の時間に、教師が「君たちにとって一番大切なものは何か」という質問を生徒に次々に答えさせた。色々な答えがある中で、教師が最後の生徒に「君たち、命は大切ではないか」と聞いた。その時の彼の答えは今でも忘れられない。「天皇陛下のためならば命は惜しくはありません」というのであった。戦争が終わっても戦争中の教育の「成果」をこれほど示す答えはないだろう。
 やがて占領軍がやってきた。それとともに今の今まで軍国主義を鼓吹していた教師が、手のひらを返したようにアメリカ礼賛を始めた。実際アメリカ軍の車両のタイヤを見て驚いた。まるで巨大な歯車のように分厚いトレッドは、日本のすり減ったタイヤとは比べものにならなかった。中学のブロック塀は、ブルドーザーであっという間に壊されて、占領軍に接収されたプールへの道路が造られた。これでは勝てるわけがないというのが、子供にさえよくわかってきた。
 こういう変化があって、俺たちは騙されていたのだ、ということを段々理解するようになっていった。もう騙されないぞというのが、その後の自分の思想を形作る原点になったような気がする。
 ほとんど同じ世代、あるいは少し上の世代の人達の中に、天皇陛下の御為に命を捨てることをたたき込まれた教育、思想・信条の自由などまるでなく、政府・軍隊に反対すれば即投獄・拷問を覚悟しなければならない空気、あんな時代を肯定的に考えられる人が何故いるのだろうと不思議でならない。
 あの戦争は自衛のための戦争であって日本は悪くないという主張が相当数見られる。百歩譲ってそうであったとして、その戦争をするに至る時代の空気そのものまで肯定するのだろうか。とてもじゃないがあんな時代はまっぴらである。
 今かしましい靖国問題にしても、靖国神社は国民を戦争に駆り立て、死んでも不満を持たせないための重要な国策機関であったことを考えれば、口では恒久平和を祈念するために参拝するとか、現在の平和で発展した日本を築くために国に殉じた人に尊崇の念を表すためとか、いくら言い繕ってみても、「よく言うよ」という感じである。
 60年の時が流れて、いつしかまた嫌な時代の足音が聞こえるようで、先行き短い人生でも、先々のことどもが気なって仕方がない今日この頃である。
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08 August

遂にやけっぱち自爆解散

 参議院本会議で郵政法案が17票という大差で否決された。これを受けて小泉首相は、直ちに衆議院の解散を決断した。同時に法案に反対した議員は公認せず、全選挙区に対立候補を立てると表明した。衆議院では可決され、参議院で否決されたからと言って、衆議院を解散する。これは解散権の乱用で、小泉首相でなければできない暴挙といえる。自党不利とわかった上での解散なのだから、やけっぱち自爆解散というべきだろう。
 解散を決める臨時閣議で、島村農水相が解散に反対して辞表を提出した。この他にも閣議では賛否両論が出たという。結局首相は島村氏を罷免して、2時間以上かかった閣議で解散を決めた。
 まさに大乱が始まった。窒素ラヂカル子が最も望むところである。野党民主党にとっては、願ってもないチャンスである。ある世論調査によると、「次の政権には自民党より民主党」という人の方が多くなっている。しかし国民が自民党の現状に愛想を尽かせて、民主党に票が流れるか、逆に孤立する小泉首相に同情して自民党に投票するか、にわかには判断できない。
 自民党はあくまでも郵政民営化を唯一の争点とするだろうが、民主党は逆にその他の内政・外交の空洞化を突いて、政権交代こそが政治の流れを変えると訴えるだろう。投票日はあの9.11である。今回は国民もよくよく考えて将来の選択を誤らないようにしなければならない。
 結果次第で小泉首相は、自民党をぶっ壊すことによって、日本の政治を大きく変えた宰相として記憶されるかも知れない。
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05 August

解散・総選挙は決まり?

 来週月曜日の本会議採決を前に、中曽根議員が郵政法案反対を表明するに至って、参院での否決は決定的か。否決されたら小泉首相は衆院を解散する事を否定していない。しかし分裂選挙になったら自民党は惨敗する可能性があるのに、それでも解散するだろうか。もしそうしたら首相は自分の意地を、党の運命より優先させる人だということになろう。すなわち「私」を「公」に優先させる人だということである。
 人の裏をかくことの好きな首相は、案外あっさりと総辞職するかも知れない。「大乱」を望む者からすれば、好ましくない方向である。しかし今の自民党内情勢では、後継者がすんなり決まるとも思えない。安倍なんぞになったら目も当てられない。やはりここは総選挙となって、民主党に勝ってもらうしかない。
 報道ステーションの古館キャスターは、「この問題山積の中で、政治的空白をつくってはいけないのではないか」というような意見を言っていたが、もともと内政・外交ともに「ど空白」の自民党政治が続いて何のいいことがあるのか。空白が出来ても経済には露ほどの影響もない。相当彼の感覚もずれているのではないか?
 全くの予想通り、常任理事国入りも完全に絶望的になった。それもそのはず。なにかというと金にものをいわせるだけで、世界から尊敬されるようなことをやってこなかったのだから当然の帰結である。反米・親米何れの立場からでも、アメリカのポチが尊敬されるはずはなく、そんな国に常任理事国になって欲しいとは誰も思わない。
 早く政権交代が起こって、も少しまともな国になってほしいものである。
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