Archive for 09 September 2005

09 September

自民党に投票しようとしているあなたに

 選挙はいよいよ二日後に迫りました。あなたはどの党に投票しようとしているのでしょうか。もし自民党に投票しようとしているなら、それは何故でしょうか。
 
 郵政民営化は断固やるべしと思うからなのですか。確かに「郵政」が今のままでいいと思っている人はあまりいないかも知れません。郵便局に集められた金は、すべて政府を通じて特殊法人などに流され無駄遣いされてきました。その340兆円もの大金が、今実際にどれだけ残っているのか誰も知らされておりません。例えば道路公団に貸し付けられた金は、バブル時代には、べらぼうな値段で土地を買うのに使われ、今実質価値は数分の一に下がっているでしょう。民間銀行の不良債権はそうして積み上がったのですから、郵便局が貸した金もそうなっているに違いありません。見かけ上は政府保証が付いているから、すべて利子がついて戻ってくることになっています。民営化された銀行と保険会社の資産勘定を健全にする為には、かつての国鉄と同じように、政府に、何十兆円も、あるいは百兆円も棚上げした不良資産を計上するのでしょうか。
 しかしいくら棚上げしても、そのツケは結局国民が払う以外に方法がありません。一体そのためにいくら払わなければならないのかも知らされないで、新しい郵便銀行が出来るといわれて、あなたは納得できますか。
 そんな滅茶苦茶なことをやってきたのが、戦後ほとんどの期間、政権を担ってきた自民党です。その責任を棚に上げて、「民営化」という、いいことをしているという顔をされても腹が立たないのですか。
 
 もう一つ、民営化を今か今かと待っているのが、アメリカおよびその資本だということは知っていますか。彼らにとっては郵政民営化とは「郵便局の売り出し」なのです。だから彼らは日米首脳会談でも、また担当の竹中大臣への書簡でも、事細かに要求を突きつけています。何しろアメリカは、世界一の、桁外れの借金国で、外国の金が流れ込んでこない限り国が成り立たなくなっているからです。そこに340兆円もの郵便貯金、簡保が売りに出されるというのですからたまりません。民営化するということは、株式会社をつくってその株を売り出すということです。もちろん外資はその株を買い、発言権を強めてその金がアメリカに流れるように、最大限の努力をするでしょう。
 ただ単に健全な郵便貯金会社や郵便保険会社の株を買うだけではありません。彼らが、あの長銀でのおいしい思いを忘れているはずはありません。数兆円もの日本国民の税金がつぎ込まれた長銀を、「瑕疵担保付き」という驚くべき有利な条件で、たった10億円で買い取り、何と1兆円も儲けたのです。今度も新しい民間金融機関を破綻させて、有利な条件で買い取りたいと思っても不思議ではありません。もし金融庁が本気で新銀行の不良債権を厳しく監督するなら、どういうことになるでしょう。民間貸し付けのノウハウを持たない新銀行と保険会社が、破綻しないという保証は何もありません。

 あなたは小泉首相の郵政にかける熱意にほだされたのでしょうか。確かに誰に何といわれようと、断固として自分の宿願の達成に突き進む姿勢はカッコいいですよね。誰でもそうありたいと思ってもなかなかそうはいきませんからね。その気持ちはよくわかります。
 でもよく考えて下さい。あなたは小泉内閣がやってきたことで、自分に、あるいは日本に有利になったと思うことがありますか。税金は高くなりました。健康保険や年金や介護保険の負担は重くなりました。国・地方合わせて1000兆円にもなろうかという赤字財政では、国民負担が重くなるのは仕方ないというのはありますよね。でもこれをここまで積み上げてきたのも自民党ですよ。しかもこの間、大企業や金持ちの税金は安くなっているのです。なるほど財界が自民党を後押しするはずです。
 
 小泉内閣の基本方針は、「努力した人が報われる社会」を作ることです。「努力した人」といわれると、「俺(あたし)も努力している」と思うかも知れませんが、実は「努力した人」は「金儲けに成功した人」と同じ意味なのです。「勝ち組」が益々有利になる社会を作ることです。その成果は着実に出ています。厚生労働省によりますと、日本の世帯別所得水準は、80年代前半までは、上位2割と下位2割の開きが10倍以内で安定していたのですが、90年代後半から驚くほど急激に拡大し、02年には168倍になっています。平均所得の半分以下の所得しかない「貧困者」の比率も年々上がって、00年で16%と、アメリカに近づいています。生活保護以下の収入しか保証しない最低賃金法さえも形骸化し、労働者のセーフティネットの役割を果たしていません。
 しかもその金儲けをした人の職業が様変わりしています。昔は松下幸之助に代表されるように、「実業」で成功した人が金持ちになりました。しかし今、高額納税者の名前を見て下さい。去年100億円以上の所得を上げたサラリーマンがいて驚かせましたが、その人は人から預かった金を運用して巨利を上げたヘッジファンドの部長でした。その他、上位には「サラ金」大手の経営者、健康食品販売業(健康食品のほとんどは無効)、パチンコ機器製造会社社長、外資系証券会社幹部、先物取引会社幹部、投資会社幹部などがずらりと並んでいます。いわば金に金を生ませた人や「虚業」で儲けた人が大半です。
 こんな社会が健全なのでしょうか。それを後押しする政治がまともな政治なのでしょうか。自民党政治を続ければ、ハリケーンの犠牲になった貧しい人を放置したアメリカ社会と同じようになるでしょう。

 それだけではありません。小泉内閣の外交はどうだったのでしょうか。なるほど突如北朝鮮を訪問して、一部の拉致被害者を取り戻しました。これは大きな成果だったといえるでしょう。しかし他の拉致被害者を取り戻す見込みは全く立っていません。しかも横田めぐみさんの遺骨とされた骨のDNA鑑定結果は、大きな疑問を持たれています。世界最高の自然科学雑誌Natureは、別人だという結論は出せないとしています。私自身も、Natureとは別の理由で、政府の結論はおかしいという文章をこのblogにも出しました。間違っている可能性の高い政府見解が、北朝鮮との窓口を完全に閉ざしてしまいました。
 もっとひどいのは小泉首相の靖国参拝です。これに反対する理由は最近このblogに出したのでここでは繰り返しません。この間違った行動が、21世紀最重要になるであろう日中関係を、修復困難になるまで悪化させました。外国に反対されるから参拝を止めるというのは最低です。自民党に投票しようとするあなたも恐らくそう思っているでしょう。しかし外国から非難されるから参拝してはいけないのではなく、そもそもあの悲惨な戦争を始めて負けた責任を不問に付したまま、その戦争遂行に不可欠であった「死んでも不満を持たせないための靖国という宗教的国家機関」に、憲法に違反して首相が参拝する政治行動が許し難いのです。

 あなたの一票が、今度の選挙で自民党を勝たせることになったら、ますます自民党は増長して、強者のため、そして世界平和に反する方向に面舵(右旋回)を切るでしょう。選挙で「造反者」に刺客を振り向けましたが、これも案外国民には爽快感、そして首相のやる気を感じさせたようです。あなたもその一人かな。
 しかしその刺客の中に、「女の心も金で買える」と豪語するIT長者や、外資系証券会社の花形チーフエコノミストが含まれていることは実に象徴的です。彼らが、金を持たないあなた(失礼!)に有利になるような政治をすると思いますか。

 小泉さんのすり替えマジックにまんまと乗せられて、「郵政民営化、マルかバツか」で自民党に投票しようとするあなた、あなた自身、そしてあなたの子や孫が、本当に自民党政治で不幸にならないかを、投票前に今一度じっくりと考えてみたら如何でしょうか。
11:27:07 | archivelago | | TrackBacks