Archive for 04 September 2005

04 September

米国の有りようへの「カトリーナ」の警告

 ハリケーン「カトリーナ」による大災害は、災害列島日本でも他人事ではない。被害者には心からのお見舞いを申し上げたい。
 しかし「カトリーナ」による被害とその後の状況は、唯一の超大国アメリカの抱える根本的な問題を浮かび上がらせた。とくにこれまでブッシュ政権が進めてきたアメリカの有りようが、間違っていることを知らしめた。
 
 第一にこのような強いハリケーンが多発するようになったことには、地球温暖化が一因になっている疑いは極めて大きい。メキシコ湾の水温上昇がハリケーンを発達させる原因になっているのである。ブッシュ政権は京都議定書から大国で唯一離脱した。その理由は自国の経済成長にマイナスになるからというのである。僅か世界人口の4%程度のアメリカは、世界の二酸化炭素排出量の25%を排出する「地球温暖化超大国」である。自国の利益だけを優先する路線は、いずれ自らの首を絞めることになる。同じ地球上にあって、一国だけ環境悪化の影響を受けずに済むわけがない。ハリケーン被害は、自然からの重大な警告と受け止めるべきである。
 ただでさえ急騰を続けていた原油価格は、この災害でさらに上がり、ガソリン不足が懸念され便乗値上げもあるようだ。しかしそれでも日本のガソリン価格の半分ほどだ。ガソリン価格の上昇は、石油節約機運を高めるはずで、長い目で見たらよいことだろう。

 第二にイラク戦争という無謀な企てに突入し、軍事費を急拡大したために、膨大な財政赤字を生み、海抜以下の地に作られたニューオーリンズ周囲堤防の強化に金が回せなかった。ここの堤防はクラス3のハリケーンに堪えるだけのものでしかなかった。クラス4の「カトリーナ」によるこの都市の水没は、いわば必然的に起こった人災である。また治安維持や救援に当たるはずの州兵がイラクに派遣されていたことも救援を遅らせた。今回の悲劇拡大にはイラク戦争が影を落としている。

 第三に強者優遇のアメリカの政策によってしわ寄せを受けていた貧困層が、犠牲者の多くを占めていたことである。市当局は全市民に避難命令を出したが、車という移動手段を持たず、金もない貧困層約10万人は避難できなかった。未だ全貌は明らかになっていないが、恐らくその人達の犠牲が極めて大きかったことは間違いないだろう。
 またそういう貧困層の集中が、被害後の治安を著しく悪化させた。制服の警官がテレビカメラが回っている前で、堂々と略奪をやっている姿は、とても最先進国で起こるべきこととは思えない。阪神大震災では住民の助け合いこそあれ、略奪は一件も起きなかった。それは戦後日本が「国民総中流」といわれる格差最小の国を創ってきたことと無関係ではないだろう。
 
 今グローバルスタンダードという名のアメリカンスタンダードが大手を振ってまかり通り、日本でも所得格差は確実に拡大に向かっている。OECDの調査に由れば、先進国で日本は3番目に貧困層が多い国だそうである。IT長者という大金持ちが生まれた反面、生活保護基準にも満たない収入の人が急増している。これは確実に社会を不安定にしていくだろう。今後起こりうる大地震などの災害で、日本でも略奪が横行しないといえるだろうか。
 今回の選挙でも、数十億円で自家用ジェット機を買った人が、「強い人を益々強くする政治」を目指して「刺客」として立候補している。その候補者に、金持ちとは思えない人達が、キャーキャーと金切り声を上げながら握手を求めているのを見ると、「アホか」と思う。
 
 こんな政治をやっていたのでは、日米でいくらテロ対策に金をかけても、テロや略奪の土壌は間違いなく拡大して行く。今ブッシュ政権がとっている一国主義、軍拡、戦争政策、テロ対策、政教一体化、等の戦略は、すべて根本的に間違っている。日本がそれに追随することは、とんでもない間違いだということに気づかないと、日本も取り返しがつかない国になっていくだろう。

23:03:30 | archivelago | | TrackBacks