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Archive for 20 September 2005

20 September

花便り(99)ヤマノイモ科ヤマノイモ属

　ヤモノイモ科は、熱帯・温帯に7属約750種が分布する。その中でもヤマノイモ属が最も多く、約600種といわれる。日本はヤマノイモ属分布の北限とされ、13種が存在している。牧野図鑑に記載されているヤモノイモ科11種のすべてはヤマノイモ属である。この属のほとんどは雌雄異株で、珠芽（ムカゴ）をつけるものも多い。
　
1.　ナガイモ Dioscorea Batatas
　我々に最も馴染みのあるいわゆるヤマイモは、ほとんどがナガイモだという。ヤマノイモ D. japonica が自然薯（じねんじょ）といわれるのに対し、ナガイモは栽培種である。この両者は地上部も、食用とする根茎(正確には担根体）も似ているが、染色体の数も違う別種である。ナガイモの茎や葉柄は紫色を帯びる。ヤマノイモは学名通り日本原産であるが、ナガイモは中国から、奈良時代までには渡来したといわれている。根茎が丸い塊になるツクネイモ D. Batatas f. Tsukune は、ナガイモの変異種である。
　地上部は一年生であるが、担根体は毎年交代しながら肥ってゆく。これを掘り出して食用にする。独り言を言うことを「山芋を掘る」という地方がある。山芋を折らないように掘ることは難しく、つい舌打ちをしたり独り言を言ったりするからである。ナガイモをすり下ろしたものは、ヤマノイモほど粘りがない。それでも麦とろやまぐろの山掛けは逸品である。ムカゴも昔から食料にされてきた。ムカゴ飯、塩ゆで、煎りムカゴ、茶碗蒸しなど様々に利用される。
　雌雄異株で雄花序は上向きに、雌花序は垂れ下がる。雌株は秋に蒴果をつける。蒴果は3枚の膜が張り合わさった形で、一室ごとに一つの、膜質翼のついた種子がある。枯れると風に乗って飛ぶ。一方ムカゴは僅かの機械的刺激で下に落ち、株周辺に新しい子株を作る。種子と違っていわば天然クローンである。花粉の出来ない三倍体のオニユリもムカゴで増える。
　写真は雄花 05.7.10、ムカゴ 05.7.24、蒴果 05.9.15それぞれ撮影。

2.　トコロ（オニドコロ） D. Tokoro
　蔓性の多年草。地上部は冬枯れるが、根はヤマノイモの芋とは全く異なり、真の根茎でひげ根を出す。我が実家では正月大きな鏡餅の上に、トコロの根を乗せていた。そのひげ根を老人の髭にたとえ、長寿を祝うものである。丁度エビを海老と書くように、これを野老と書く。
　花はヤマノイモやナガイモ同様雌雄異株で、雄花序は上向き、雌花序は下に垂れ下がる。
　05.8.23撮影。

3.　タチドコロ？ D. gracillima
　この写真はトコロかも知れないが、トコロより葉の幅が狭く、先端が長く尖っている一方、ヤマノイモよりは広いので、タチドコロかと思うが確信は持てない。花序が垂れているので雌株である。
　雌株の写真は05.8.23、蒴果の写真は05.9.15撮影。

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