Archive for 24 August 2005

24 August

「ぶれない姿勢」は正しい判断力があってこそ

 今回の解散で小泉首相の「ぶれない姿勢」が好感を持たれたのか、内閣・自民党支持率が上昇している。22日の朝日新聞「声」欄にもそんな声が載った。
 確かに政治家の資質として、強固な信念、ぶれない実行力は重要なものだろう。しかしその信念・実行力は、正しい「判断力」に裏付けされていることが不可欠の前提である。間違った判断に基づいた実行は、「蛮勇」をふるった「暴挙」でしかない。それでは国民は迷惑この上ない。その点で小泉首相のこれまでの判断に問題はなかったのだろうか。
 かつて郵政民営化への国民の関心は数%に過ぎなかった。小泉内閣は、より緊急度の高い課題を放置して、郵政一本で突っ走ってきた。しかも廃案になった法案は、賛成者を増やすためとはいえ、妥協に妥協を重ね、「民営化」とは名ばかりになっている。これでは官の特権を残したまま、公社を肥大化させるだけだろう。
 外交的には何の戦略もなく、「誰が何と言おうと、8月15日に靖国に必ず参拝します」という馬鹿げた公約をし、中国・韓国との関係を致命的にまで悪化させた。これが長い将来にわたってどれ程国益を損じるか計り知れないものがある。このことがアジアにおいても日本の存在感を大きく損なった。大金を使ってまで果たそうとした国連常任理事国入りで、インドを除いて、アジア諸国からただ一国の共同提案国をも得られなかったことはそれを示している。
 いまや泥沼化したイラク戦争を無条件で支持した判断も完全に裏目に出た。憲法に触れるほどの無理までして歓心を得ようとした米国は、常任理事国拡大問題では積極的にG4案をつぶしに動いた。その結果、あれほど「日米蜜月」と持ち上げられていた小泉ーブッシュ関係は、サミットでも個別会談さえ出来なくなった。
 こう考えてみたら小泉首相の判断力にはとても合格点を上げられない。今の段階では、劇場化した政局に国民はすっかり惑わされているようである。マスコミが「刺客だ」「新党だ」と騒ぐのに乗せられて、政権選択のための争点がすっかり霞んでしまった。有権者は小泉の「ぶれない姿勢」が何をもたらすか、頭を冷やして誤りない一票を行使したいものである。


18:29:34 | archivelago | | TrackBacks