Archive for 13 August 2005

13 August

花便り(76)五台山の花(5)

1. 不明のキジムシロ属3種
 最初の写真のような葉を持ち、黄色い花を咲かせる種は日本にはカワラサイコ Potentilla chinensisとヒロハノカワラサイコ P. nipponicaがある。前者はchinensisというのだから中国原産なのだろうが、海岸や河原の砂地に生える植物であって、高地に生えるとも思えない。葉は低く地を覆うように盛大に茂っていて、カワラサイコとはかなり印象が異なる。
 2番目の種の葉は、カワラサイコの羽状複葉の小葉が対生なのに対して、互生という点で異なる。
 3番目の写真は花は露出過度でつぶれているが、葉がよくわかるものを選んだ。茎は多数に分岐して多くの花をつける。奇数羽状葉の小葉は、ミヤマキンバイ Potentilla matsumuraeより幅が狭く、かつ深く切れ込んで羽状を呈し、ヒロハノカワラサイコによく似ている。ヒロハノカワラサイコは日本及びアジア東部に広く分布するとされている。




2. 不明のキンポウゲ科キンポウゲ属
 花の形はバラ科のキジムシロ属に非常に似ているが、しべが多数で球状塊を作っていることから、キンポウゲ属と判断した。花茎が長く、途中で枝分かれし、それぞれの先端に花をつけている。茎の分岐点に線状に裂けた葉を持つが、根出葉が不明で種を確定できない。


3. キキョウ科ツリガネニンジン属3種
 五台山にはツリガネニンジン属の植物も多い。
 最初の写真の植物は、主茎が直立し、輪状に枝を出して、それぞれの枝に多数の花をつけている。花冠はやや先が開いた釣鐘状で、先が5裂し少し外に反り返る。花柱が長く花冠から突き出している点はツリガネニンジンと同じ。枝分かれする日本のシャジン類ではフクシマシャジンやシデシャジンがあるが、そのどれとも一致しない。
 第二の写真はヒメシャジン Adenophora nikoensisかその変異体であるミヤマシャジン var. stenophyllaに近いように見える。
 第三の写真の植物は、釣鐘というより提灯のように丸い花をつけている。類似種は日本にはないようである。




4. セリ科3種
 最初はウイキョウ Foeniculum vulgareと見られる、黄色い花を咲かせるセリ科植物である。もともとヨーロッパ原産とされている。回香(茴香)と書くように、西方の回教徒が中国にもたらしたハーブである。魚の生臭さを消したり、スープの香り付けにも使われる。
 第二はミヤマウイキョウ Tilingia tachiroei とみられる白い花である。日本、朝鮮、中国東北部に分布する。葉が1〜4回3出羽状複葉で、小葉の裂片は狭線形という特徴がある。茴香に似ているが薬効も香りもない。蠅のような昆虫が群がっていた。
 第三はハナウド Heracleum moellendorffiiと見られる花である。セリ科の花はほとんどその花弁が内側に巻き込むが、この花の5個の花弁の内、外側の花弁は大きく2裂、V字型をして平開し、内側の小さい花弁だけが内側に曲がるという、独特の形態をしている。なおウドはウコギ科で、ハナウドとは縁遠い。




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