Archive for 17 April 2005

17 April

花便り(10)野草3種

1.ヒゴスミレ(スミレ科スミレ属)Viola chaerophylloides
 スミレといいながら葉だけを見たらとてもスミレとは思えない。エイザンスミレと似ているが、葉の切れ込みはさらに細かい。大陸系のスミレとされる。実際黄山の近くで咲いているのを見た。肥後の名前があるが、本州にも少なくない。
 スミレの権威、橋本保氏の「日本のスミレ」のよると、ヒゴスミレやエイザンスミレの分類学上の取り扱いは、古くから学者の頭を悩ませたものだそうである。
 鉢に植えているとこぼれ種でいくらでも増えていく。まとまるとなかなかのものである。我が家ではもう花が終わりかけている。


2.イカリソウ(メギ科)Epimedium macranthum
 主に丘陵や山裾の樹林に生える。写真は寺院の庭の、石組みの間に生えていたものである。花の形が錨のようだからこの名がある。4枚の花弁に2cmもある距があるからそう見える。三つに分かれた枝にそれぞれ3枚の心臓形の葉が付くのでサンシクヨウソウ(三枝九葉草)ともいうが、漢名の三枝九葉草は別種のものだという。


3.タマノカンアオイ(ウマノスズクサ科カンアオイ属)Asarum tamaense
 冬でもアオイのような葉が枯れないのでその名がある、カンアオイの仲間の一つ。多摩丘陵に多い。カンアオイはギフチョウの食草としてしられる。
 1年に1枚ずつ葉をつけるほど成長も分布速度も極めて遅い。筆者の場合20数年前に8号鉢に植えていたものを地植えにしたが、いまだにその鉢の大きさから出ない。そのため各地で地史的な長時間孤立し、種分化して数多くの地名を冠した種を生じることになった。東海・近畿にスズカカンアオイ、伊勢湾沿岸にアツミカンアオイ、四国にナンカイアオイ、九州にツクシカンアオイ、伊豆のアマギカンアオイなど。
 タマノカンアオイは4月頃、暗紫色の花を葉柄の根元に半分土に埋もれたように咲かせる。葉をかき分けないと見えないことが多い。花は美しさとは縁遠いが、爽やかな芳香を持つ。

14:51:47 | archivelago | | TrackBacks