Archive for 16 April 2005

16 April

中田横浜市長殿 その意見には賛成できません

 中田横浜市長は筆者が最も尊敬している政治家の一人である。しかし今日の日本テレビ、「ウェークアップ!プラス」での、現下の日中関係についての意見には賛成しかねる。氏は「日本が反省すべきことがあるとすれば、今まで言うべきことを言ってこなかったということである」と発言した。
 確かに日本は言うべきことを言ってこなかったというのはある意味で事実であろう。しかし言えなかったのは、自ら後ろめたいことがあったからではないのか。後ろめたいこととは、これまで何回となく、「公式には」戦争を引き起こし、中国人民に多大の迷惑をかけたことを首相も天皇も謝罪してきた。しかしそのような建前とは別に、政治家、言論界などが、戦争に対して反省してはいないのではないかと疑われる言動を無数に繰り返してきた。そのために、相手からは「日本は本音では反省していないのだ」と思われてしまっている。
 小泉首相の靖国参拝しかり、日本はアジアの植民地を解放するのに役に立ったという歴史観を持つグループの教科書を検定に合格させたことしかり、卒業式などで君が代・日の丸を強制することを公然と認めていることしかり。その他多くの政治家やメディアの本音発言が繰り返されてきた。これらがすべて中国人の心を逆なでしてきたのである。加害者は忘れても被害者は忘れない。逆の立場であったなら、日本人はどうであったかを一度でも考えたことがあるか。
 確かに日本は戦争を放棄した憲法の下で、戦後60年間、一人たりとも外国人を殺したことはない(北朝鮮の不審船を除いては)。今でも多くの日本人は平和を強く望んでいる。その実情が中国の大衆にほとんど伝わっていない上、相変わらずの反日教育が繰り返され、極めて一方的な情報に基づいて反日の炎が燃え上がっているのは確かである。
 しかし日本がドイツと同じように、まともな歴史認識のもとに、平和への国家意思を近隣諸国に伝えることに成功していたなら、中国といえども、現状のような反日教育をすることには躊躇したはずである。不信がなくならないから、反日教育をしたくなるのである。もし信頼感を醸成していたなら、日本も言いたいことを言えたであろう。その信頼感がない土壌の上に、言うべきことを言うのであれば、それは益々不信の悪循環を招くだけである。
 小泉首相の靖国参拝がなかったならば、日中首脳の交流も続き、交流があれば今回のような過激なデモも起こりえなかった。中国国内の深刻な諸問題、貧富の格差、役人の腐敗などについての不平不満を外国に向ける面もないとはいえないが、この日中関係の悪化の原因を中国にだけ求めるのはことの本質を見誤っている。
 今のような反日デモの暴力沙汰はあってはならないし、それをまともに阻止しようとしない中国当局の態度は、国際的にも非難されて然るべきものである。それに対して毅然として抗議し、賠償を求めるのは当然である。しかしその時同時に、日本の過去の過ちについては謝るべきは謝り、正すべきは正し、誠意を以て正常化への強い意思を伝える態度がなければ対立を深めるだけである。その意思を政府当局に伝えるだけでは足りない。中国の若者に直接、中国のジャーナリズムが伝えない、日本の姿を伝えるためにインターネットも利用すべきだろう。現状が続くなら、日本人にも嫌中感情が蔓延し、取り返しの付かない状況を招くだろう。
 今後日本の経済は、中国、インドなどの成長に依存する所大である。これらの国の成長はプラスの面だけでなく、資源や環境への悪影響も伴ってくる。資源争奪も激しくなるだろう。そんな困難な時代へ向かうに当たって、中国と話し合いもできない関係をつくっておいて、日本は生きて行く道があるのか。一時的なナショナリズム感情に流されて、長期の国益を損なう愚をおかしてはならないのである。
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