Archive for 24 March 2005

24 March

挑発的なブッシュ人事

 ここのところ二つのブッシュ人事が大きな波紋を拡げている。ボルトン国務次官を国連大使に、ウォルフォウィッツ国防副長官を世界銀行総裁候補にしたことである。ともにネオコンの最強硬派として知られている。二人とも、イラクを民主化することが米国の使命だと主張して戦争を支持し、ヨーロッパとの亀裂を深めた。
 これらの人事はブッシュ政権が、国際協調主義といいながらも、単独行動主義、米国至上主義を全く変えていないことを示すとして、国連内およびヨーロッパに驚きと懸念を生じさせた。イラク情勢の混迷から、このところ鳴りを潜めていた感じのネオコンが、こういう形でまた陽の当たる場所に出てくることは、ブッシュの世界への挑発のように感じ取れる。
 ボルトン氏は再三国連を批判し、国連ビルの10階分くらいなくなっても何の支障もないとさえ言った人物である。ある国連職員は人事発表の日に、「今日は憂鬱な日」だと嫌悪を隠さなかった。
 
 それよりもっと問題なのは、ウォルフォウィッツ氏の世界銀行総裁就任の可能性である。これまで世銀の総裁は米国から、IMFの専務理事はヨーロッパから、という不文律があるが、こんな人事をやるようでは、トップ人事についての理事会権限の強化とトップ選出のルールを定める必要が出てきそうである。
 
 これまでただでさえ世銀もIMFも、米国が競争力のない途上国に市場経済を押しつけるための道具だという批判が強かった。その上、民主主義を世界に押しつけることを理念としているネオコンが総裁に就任すれば、途上国の世銀への信頼感は益々損なわれるだろう。米国内の民主党筋からさえこの人事には疑問の声が出ている。
 ブッシュ大統領からこの人事構想を伝えられた小泉首相は、直ちに支持を表明したという。例によって例の通りである。米国に次ぐ世銀への出資国である日本は、こういう国際機関の人事を含む改革を、もっと強く主張すべきであった。これほど露骨に米戦略の道具として国際機関を使おうとするやり方は、世界の支持を得られないだろう。
23:49:03 | archivelago | | TrackBacks