Archive for 16 October 2005

16 October

資本原理主義

 楽天および村上ファンドによるTBS株の大量取得に絡む発言から。(言葉は正確でないことは最初に断っておく)
1)村上世彰「ここにTBSの記者いますか」「TBSは何のために上 場しているのですか」
  TBS記者「要するにあなたは金儲けしたいだけでしょう」
  村上「僕の質問に答えて下さい」
 この後、テレビの場面が変わったので、記者が何と答えたかはわからない。
  
2)村上「ファンド設立当時、訪米して出資者を前にファンドの社会的意義を述べたところ、『帰れ』と言われた。当時は自分も青かったということ」
 (つまりファンドマネージャーは金さえ儲けてくれればいいのであって、社会的意義など考える必要はないということ)

3)麻生総務大臣(今度の株取得についての感想を聞かれて)「日本はいつから経営者が株主を決めることになったの?」(つまり株主が経営者を決めるのであって、その逆ではないということ)

 この三つの発言は、資本原理主義を見事に表現している。言い方を変えれば、「上場している会社の株を買い占めて何が悪い」「金がすべて」「会社は資本家のためにある」ということである。
 資本主義は名前の通り、「金が主人」の制度である。資本主義先進諸国においては、少なくとも法律上の原理である。今は社会主義国であるはずの中国さえ、日本以上に資本主義的である。しかしほんの十数年前までは、企業のステークホルダーは株主だけでなく、経営者、社員、取引業者、消費者、地域社会など多くの関係者を含み、企業は等しくこれらの関係者の利益に貢献すべきだという考えが広く受け入れられてきた。これは資本主義の歴史の中で、「資本の横暴」を乗り越えるために、人類が知恵を絞って獲得した果実ではなかったのか。
 ところが米国流競争主義、市場主義が声高に主張されるようになって、ここに挙げたような資本原理主義的な言葉が、後ろめたさを伴わないで、大臣の口からさえ語られるようになった。かつて賞賛された「日本的経営」は弊履のように捨てられた。
 しかしこういう資本原理主義的な考えに共鳴する日本人は、今でもどれほどいるのだろうか。「金がすべて」という原理と、「人を幸せにする」という行動基準と、どちらを取るべきかは自明のことではないか。金を右から左に動かして儲ける「錬金術師」や虚業家だけが高額納税者に並ぶ社会が、健全な社会といえるのか。いや資産数千億円、1兆円といわれる本当の大金持ちは、税金さえもろくに払っていないのである。
 そういう不条理を正さないで、なにが「改革」なのか。「改革」の呪文で催眠術にかけられている国民の目が覚めるのはいつのことか。
23:27:02 | archivelago | | TrackBacks