Archive for 12 October 2005

12 October

花便り(108)キンモクセイとギンモクセイ

 春から初夏にかけて数多くのモクセイ科の花が開花する。レンギョウ、ウンナンオウバイ、キソケイ、ネズミモチ、トウネズミモチ、トネリコ、ライラック、イボタノキ、ハゴロモジャスミン、オリーブと、応接にいとまがない。
 それに対して秋に咲くモクセイ科の花もある。
キンモクセイ Osmanthus fragrans var. aurantiacus (橙黄色の)
ギンモクセイ O. fragrans (芳香のある)
ウスギモクセイ O. fragrans var. Thunbergii
ヒイラギモクセイ O. × Fortunei
ヒイラギ O. heterophyllus など。
しかしその色、強烈な香り、そしてその数で、キンモクセイほど存在感をアッピールする木はない。それに比べてギンモクセイやウスギモクセイは遙かに数が少ない。キンモクセイとウスギモクセイはギンモクセイの変種とされている。これらは中国から渡来したというのが定説であったが、キンモクセイは日本でウスギモクセイから育成されたという説も出ている。
今年は残暑が長引いたためか、金木犀の開花が遅れた。普通はヒガンバナとほとんと時期を同じにするが、遅れ気味に咲いたヒガンバナよりもっと遅れた。さすが10月半ばの今日この頃では、遅れた花も木の下に金色の絨毯のように散り敷いている。
 金木犀の花を材料にした酒を中国では桂花酒と呼ぶ。中国語の桂は、日本のカツラではなく、金木犀を指す。観光地で有名な桂林は、その名の通り、樹齢数百年の大木から街路樹まで、至る所に金木犀が植えられている。白花の銀木犀の他、稀に赤い花のものもあるらしいが、見たことはない。ここに挙げたモクセイ属の植物は雌雄異株で、キン、ギン共に、日本には雄株しかないので結実しないが、桂林では沢山実を付けていた。ウスギモクセイは日本にも雌雄両方の株があるので結実する。

 深窓に ピアノいつ鳴る 金木犀    宮沢富士男
 ほつほつと 木犀の香に 降って来し  中村 汀女
 
 家庭で金木犀酒を楽しむには、その花を、香りの強い時期に早めに摘み取り、梅酒の要領で砂糖又は氷砂糖と35度の甲類焼酎につけ込む。美しい色がついてきたら、花を濾し分けて除き、瓶に保存する。つけ込んでいる期間が長すぎると色が飴色になるが、飲むのに支障はない。馥郁たるキンモクセイの香りがいつまでも楽しめる。

キンモクセイ 木の全姿 05.10.6、花の拡大 05.10.4撮影。



ギンモクセイ いずれも 05.10.6撮影。ただしこの花は薄く黄色がかっていて、ウスギモクセイの可能性もある。


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