Archive for August 2005

30 August

花便り(90)キンポウゲ科オダマキ属6種

 本属は北半球の温帯に約10種分布する多年草。日本にもオダマキ Aquilegia flabellata、ミヤマオダマキ A. flabelata var pumila、ヤマオダマキ A. Buergeriana が存在する。このほかヒメウズをオダマキ属に入れている図鑑もある。牧野図鑑ではオダマキを北地の原産だろうとしているが、最近はミヤマオダマキの園芸品種とする情報が多い。しかし学名はミヤマオダマキの方を変種として扱っている。
 オダマキ属の花は、5個の萼も花弁化し、5個の花弁と共に一つの花を形成する。花弁の基部は長い距になり内側に曲がっている。今回紹介する6種はいずれもセイヨウオダマキ A. vulgaris 系だろう。
 
 苧環(おだまき)とは、中を中空にして巻いた糸巻き(またはその道具とする説も)をいい、花の形がそれに似ているから名付けられた。今NHKで大河ドラマ「義経」が放送されている。やがてそのドラマでも出てくるかも知れないが、
「しづやしづ 賎(しづ)のおだまき 繰り返し
昔を今に なすよしもがな」
静御前(義経記)
という歌が有名である。これは義経と生き別れになった静御前が、鎌倉に呼び出されて頼朝の前で舞を舞わされたときの歌とされる。それには頼朝に対する静御前の精一杯の皮肉と怨嗟が込められているという。その面白い意味解きに興味のある方は次のURLへどうぞ。
http://www.geocities.co.jp/PowderRoom/9182/newpage6.htm

05.3.24撮影。


05.5.3撮影。


05.5.3撮影。


05.5.12撮影。


05.5.31撮影。


A. vulgaris cv. Dragonfly 05.5.31撮影。

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29 August

花便り(89)サトイモ科5種

 熱帯から温帯にかけて、主として湿潤地に160属2950種が分布する単子葉植物。一部の属を除いて、仏焔苞という独特の形態を持ち、それに包まれた肉穂花序に密集して花をつける。サトイモやコンニャクなど、食用にされるものもある。ミズバショウやザゼンソウなど登山者に馴染みの花もある。

1. ユキモチソウ(テンナンショウ属) Arisaema sikokianum
 林下に生えることが多いテンナンショウ(天南星)属の植物には、その色、形から、美しさより気味悪さを感じる人が多いだろう。特にマムシグサのように、毒蛇を連想させるものもある。その中でユキモチソウは例外かも知れない。この属の仲間は肉穂状の花序の先に付属体が発達するが、ユキモチソウでは棍棒状の付属体の先がふっくらした、柔らかい球状になっている。これを雪餅になぞらえた。写真はその部分が露出過度になっていて明瞭でないのは残念。雌雄異株。04.4.30撮影。


2. ウラシマソウ(テンナンショウ属) Arisaema urashima
 黒褐色の仏焔苞は前に折れ曲がって筒口を覆い、その中から付属体の先が一旦上向きに出て、1mほどもある糸のように長く伸びる。それを浦島太郎の釣り糸になぞらえた。雌雄異株。1と同様、エビネ園になっている近くの林の中で04.4.30撮影。


3. オランダカイウ(オランダカイウ属) Zantedeschia aethiopica
 いわゆるカラーの一種。カイウは海芋と書く。本来水辺の植物。05.5.9撮影。


4. キバナカイウ(オランダカイウ属) Zantedeschia elliotiana
 花も葉も美しいカラー。05.5.11撮影。


5. ショウブ(ショウブ属) Acorus calamus
 5月頃淡褐色の円柱状の花穂を出す。端午の節句の頃、菖蒲湯に使われるのはこれである。アヤメ科のハナショウブとは関係がない。小石川植物園で05.5.27撮影。


 サトイモ科には、園芸的にも重要な、オオベニウチワ(アンスリューム)、スパティフィラム、観葉植物のカラデュウム、ポトスなど、多くの植物があるが、まだデジカメで撮った写真がない。

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28 August

花便り(88)ユリ科ギボウシ属

 東アジアの亜寒帯から温帯にかけて、40種が分布する根茎のある多年草。橋の欄干にあるタマネギ状の飾り、擬宝珠に蕾の形が似ているためにこの名がある。一つの花は一日花だが下から順に咲き上がっていくので、かなり長期間楽しめる。
 日本原産も数種あり、中国、朝鮮から古い時代に移入されたものを含めると10種近くあるようである。ただ例えば牧野図鑑ではコバギボウシはミズギボウシの別名としてあるのに対し、インターネット上の、岡山理大植物生態研究室(波田研)のHPでは、別種として扱っている。ここでのミズギボウシは、牧野図鑑でのナガバミズギボウシに相当するように思われる。また別のHPでは両者の区別は難しいとしている。
 自然交雑もある上に、外国で数百種の園芸品種が作り出されたとされる。ギボウシ属の花は素人にはほとんど区別が付かず、主として葉の形・色・大きさで判断せざるを得ないが、写真上ではなおその判別が困難である。従ってここでは名前を示さず写真だけを提供するのにとどめたものが多い。

1. トクダマ Hosta Sieboldiana var. glauca
 ギボウシ属の中ではやや特異な種類である。牧野図鑑の表現を借りると、「葉が水平に開き、質は強く、初めに白い粉をつけた暗緑色」「花被は正開せずに倒卵形のつぼみが僅かにほころびた程度で終わる」とあるので、この写真のものはトクダマで間違いないだろうと思われる。


2. スジギボウシ Hosta undulata
 緑と白の条が入り非常に美しい。自生はなく、不稔自然雑種の園芸品種とされている(写真上)。写真下は葉の縁が白い斑入りである。



3. ギボウシ? H. undulata var. erromena
 ギボウシの葉の支脈は片側8〜9、オオバギボウシのそれは10〜15というから、この写真の植物はギボウシであろう。


4. コバギボウシ H. sieboldiiH. or H. albo-marginata または ミズギボウシ H. longissima var. brevifolia
 ミズギボウシの名の通り、湿原またはその周辺に生育するギボウシ。葉がギボウシなどより細長い。極端に細長い種類をナガバミズギボウシとする説(牧野図鑑)があるが、雑種もあるようなので実際の分類は難しいのだろう。同じ事情はオオバギボウシとトウギボウシとの間でもあるらしい。


5. オトメギボウシ H. venusta? または イワギボウシ H. longipes? または?


6. ?
 花茎の高さが高いのであるいはオオバギボウシかと思われるが葉がよくわからないので断定不能。

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26 August

花便り(87)ラベンダー3種

 季節はずれになってしまったが、ラベンダー3種を載せる。ラベンダーは地中海地方、アフリカ、インドなどに20種あるとされるシソ科植物。日本では北海道が有名だが、ハーブの代表的な存在である。植物体全体が芳香を有し、ローマ時代から入浴の時の香水として用いられた。lavenderの名はラテン語の洗うという意味のlavareに由来する。花を水蒸気蒸留して得られる精油をラベンダー油といい、その30〜40%が酢酸リナリル。そのほかゲラニオール及びそのエステルが含まれる。我が家でも布袋に入れた乾燥葉を熱湯で10分ほど抽出したものを入浴剤として使うことがある。ラベンダーのことを話だけで知っている人は、それが木本であることを知らない人が多い。枝ごとドライフラワーにしたものを使ってリースやスティックを作って部屋に飾るのもいい。

1. イングリッシュラベンダー Lavandula angustifolia
 ラベンダーの代表種。花色には紫色が多いが、白や桃色もある。花期は初夏。自宅で05.7.12撮影。


2. フレンチラベンダー L. stoechas
 花穂の先に花弁状の苞があるのが特徴。05.5.11撮影。


3. フリンジドラベンダー L. dentata
 イングリッシュラベンダーの葉が全縁であるのに対し、本種の葉は小さい鋸歯があってギザギザである。11月〜4月が花期。これも自宅にあるが、写真は他家のもの。05.4.19撮影。


 この他、葉が羽状に深く細かく切れ込んだレースラベンダー L. multifidaがあるが、まだ写真がない。

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25 August

花便り(86)夏咲きアジサイ科4種

 アジサイ科には春から6月頃に咲くものが多いが、中には7月以降に咲くものもある。今回はそのような種類の中から4種の写真を示す。

1. ノリウツギ(アジサイ科アジサイ属) Hydrangea paniculata
 真夏、枝先に8〜30cmの円錐花序を出す。少数の装飾花も多数の両性花も共に白色、花弁は4〜5個。幹の内皮で製紙用の糊を作ったので、「糊空木」または「糊の木」という。ここでは株全体と花の写真を示す。8月の現在、盛りはもう過ぎかけていて、きれいな花は少なかった。05.8.16撮影。



2. ミナヅキ(アジサイ科アジサイ属) Hydrangea paniculata cv. Grandiflora
 ノリウツギの園芸品種で、花の全体が装飾花になったもの。写真の花は開花の過程にあり、やがて円錐花序全体が装飾花になる。05.7.14撮影。


3. バイカアマチャ(アジサイ科バイカアマチャ属) Platycrater arguta
 静岡以西の太平洋岸、四国、九州に分布する落葉低木。7月頃、直径5〜10cmの集散花序をまばらに出す。花はちょっと面白い。装飾花(写真上)の萼は直径1〜2.5cmの帯緑白色皿状。これは冬まで枯れ残る。その中央に両性花とほぼ同型で小さい不稔の花がつく。両性花(写真下)は直径2cmほどの白色花。雄しべは多数で黄色の葯を付ける。2本の花柱は白く、雄しべより上に出る。05.7.14撮影。



4. テマリタマアジサイ(アジサイ科アジサイ属) Hydrangea involucrate f. sterilis
 タマアジサイの両性花は紫色で、その周りを白色の装飾花がまばらに取り囲んでいるが、テマリタマアジサイは花序が球形になり、花のほとんどが装飾花になったものである。タマアジサイのタマは、開花前の花序が総苞に包まれて球形をしていることから命名されたもので、開花後の花序の形から来たものではない。05.7.14撮影。

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