Archive for July 2005

20 July

大乱こそ望むところ

 参議院での郵政民営化法案がどうなるかが注目されている。小泉首相は来日したパウエル前国務長官に、「法案が否決されたら政界は大混乱になる」と伝えたという。それに先立ち、片山参院自民党幹事長は講演で、「法案が否決されたら首相は間違いなく衆院を解散するだろう。もしそうなったら自民党は分裂選挙になり、野党が漁夫の利を得て自民党は間違いなく野党に転落する」と述べた。法案に反対する議員を牽制したものである。
 民営化法案が成立する方がよいかどうかは別にして、自民党が大混乱するのは大歓迎である。この機会にガラガラポンと、民主党を含めた大再編が起こることが国民にとって最も望ましいことである。自民党も民主党も多少カラーと比率の違いはあっても、どちらも大きく考えの違う人達の混成チームである。国民としては選択に困る。
 この際、1)官・業・労・宗教何れともしがらみがない、2)国民あるいは自治体住民に奉仕できる、3)米国べったりでなく、隣国とも友好関係を結べる、偏狭なナショナリズムとは無縁な、4)リベラルで、世界平和の為の労を惜しまない、そういう人達が大同団結して一党をつくる。自民党にも少数ながらそういう人はいる。党首には若くても年配者でもよいからカリスマ性のある人がなる。
 そういう党が出来たら国民の人気が出ると思うけどなあ。これはやはり夢物語か。後半月もすれば大乱が起こるかどうか決着が付く。その後しばしの夢が見られるかも。
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16 July

どこまで広がるアスベスト公害

 クボタによる社員及び近隣住民の中皮腫による死亡数の公表以降、多くのアスベスト製品生産工場での患者数の発表が相次いでいる。そしてその被害の拡がりの深刻さが懸念されている。
 何しろ日本はアスベストの消費大国であり、1970年から90年初頭までが輸入のピークであった。この期間、年に30万トン前後が輸入されており、03年でさえ2.5万トンが輸入されている。アスベストはその耐熱性、耐火性、断熱性、遮音性が極めて優れ、戦前からありとあらゆる製品や場所に使われてきた。昔のかまどや風呂の煙突、屋根や壁のスレート材、水道管はアスベストとセメントで出来ていた。天井や壁の断熱、防火、吸音のために建築物には広く利用されてきた。化学工場などの配管の断熱にもアスベストが大量に使われているはずである。
 学校、公共建築物、マンション、個人用住宅には、アスベストが今でも大量に残っている。ロック演奏会が行われる日比谷公会堂の天井はアスベストだそうである。大音響と共にアスベストの塵が舞っているのかも知れない。
 阪神大震災で倒壊して撤去された建物には、大量のアスベストがあったはずである。今後東京などの大都市で大地震があったなら、それこそアスベストの粉塵が舞うだろう。今後建て替えられる建築物からのアスベストの飛散をどう防ぎ、どう処分するかも大問題である。
 アスベスト製品を作っていた工場の社員だけでなく、下請け作業者、その製品を扱った建築現場などで働いていた人の数は、それこそ数え切れないだろう。すでに症状が出た人、死亡した人だけでなく、潜在発症危険者がどれ程いるかも問題だが、これからその危険にさらされる人も膨大な数になるに違いない。
 これまで水俣病、血液製剤によるエイズ、ハンセン病など、行政および立法府の不作為と怠慢が被害を拡大してきた。アスベスト被害でもまた同じことが繰り返された。旧労働省が本格的に禁止を始めたのはWHOが危険性を断定してから15年も経っていた。最終的に使用禁止にしたのは去年のことである。今度もまた環境省はアスベスト被害を「公害」とはしたくないようである。しかし被害の場所が工場とは限らないことから、「労災」と考えることは被害者の救済に齟齬をきたすことになるだろう。
 こういう問題に対して政治がとろいのは、いつになったら直るのだろう。
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12 July

情報源秘匿で記者を収監する「自由の国」アメリカ

 米ホワイトハウス高官がCIA情報員の名前をメディアに漏らしたとされる疑惑報道に絡んで、NYタイムズ紙のジュディス・ミラー記者が「法廷侮辱罪」で収監された。
 この疑惑はブッシュ政権の意図に反して、イラクのウラン購入疑惑を否定した米国のウィルソン元駐ガボン大使を陥れるために、その妻プレイム氏がCIAの情報員であることを、米高官がメディアにリークしたというものである。情報員の身元公開は犯罪になる可能性があるため、特別検察官が高官の特定を進めている。
 ミラー記者は政府高官の氏名を取材したものの、記事にはしなかった。彼女は「もしも情報源の秘匿について信頼されなければ、記者の仕事は果たせないし、報道の自由もあり得ない」として、あくまでも大陪審での証言を拒否した。一方、同じく証言を求められていたタイム誌のマシュー・クーパー記者は、大陪審で政府高官の氏名を証言するとしたため、収監を免れた。二つのメディアの対応は全く正反対になった。
 ジャーナリズムの倫理と報道の自由を優先させたNYタイムズ紙とミラー記者に強い支持を表明したい。報道の自由は権力の腐敗、不正を防ぐ意味で、民主主義にとっては死活的な重要性を持っている。米国でも州法では記者の取材源の秘匿を認めるところもあるらしいが、連邦レベルではその法制度がない。法廷で証言しないということで、記者が「法廷侮辱罪」で収監されるのでは、報道の自由は保てない。
 その恐れは早くも現実のものになった。オハイオ州最大の日刊紙、ザ・プレーン・ディーラーが、「2本の重要な調査報道記事が私たちの手の中でしおれようとしている」と発表した。「一般読者のためになる記事だが、両方ともリークされた書類によるものであり、漏らした人物は深刻な問題に直面することになる(ので掲載できない)」と明らかにした(朝日、05.7.12夕刊)。
 こういう風にメディアが自主規制をするようになったら、かつてのベトナム戦争に関する国防総省の秘密報告書報道、ウォータゲート事件の暴露などの報道の金字塔は生まれてこないだろう。最近の米国は、「テロとの戦い」の名のもとに、果たしてこれが自由と民主主義の国かと思われるような変化を遂げているように見えるが、証言を拒否しただけで記者が収監されるという馬鹿げた事例が増えてくれば、報道の自由も風前の灯火である。「寒気を催す決定で、悪事のもみ消しにつながるだけ」というNYタイムズ紙の編集長の嘆きが広まることになろう。
 
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10 July

「テロとの戦い」の空しさ

 オリンピック招致成功で沸くロンドンで、翌日同時多発テロが起こった。折しもブレア首相が議長を務めるサミット第一日に合わせて、周到に練られたテロ計画のようにみえる。9.11テロを契機に、ブッシュ大統領を先頭に、「テロとの戦い」が宣言され、アフガンに続いて米・英・伊・豪・西などの同盟軍がイラクで戦争を始めた。
 その結果は皆が知る通りである。イラクでは治安の悪化はとどまるところを知らず、トルコ、スペインに続いて今度のロンドンでのテロである。何の罪もない多くの人々が犠牲になった。次はローマという見方が有力である。東京も安泰とは言えない。
 初めからわかっていることであるが、力ずくでテロを完全に封じ込めることは不可能である。イラク戦争がテロを各国に拡散させ、世界を限りなく不安全にした。
 今でもイラク戦争が正しかったと強弁するのは、ブッシュ政権と小泉首相ぐらいのものであろう。あの戦争を支持した人でも、口に出す出さないは別にして、今となってはまずかったなと思っているだろう。あれほど「テロとの戦い」に高揚した米国でも、いまではイラク戦争が正しかったと考える人は半数を切った。
 一方に、「神のご加護を」と唱えながら、10万人以上のイラク人を殺したブッシュ政権があり、他方に、イスラムの正義のためなら手段を選ばず、無辜の人を殺しても平然としたイスラム原理主義者がいる。何れも何と愚かな者どもだろう。もっともこれまでも、大勢を不幸にする戦争の多くは、常に愚者によって始められた。
 神を絶対視したらお互いに妥協は不可能である。今度のテロ後、ブレア首相が、「犯人はイスラムの名の下に犯行に及んだ」と発言したことは、テロとそれとの戦いを、宗教戦争にする危険をはらむ不用意な発言である。
 窒素ラヂカル子がそのHPで何度も主張したように、宗教を相対化しなければ人類に救いは訪れない。その点で多くの日本人は、宗教を相対化できる、世界でも稀な国民である。その態度が世界の非常識だとしても、その非常識を世界の常識に変えていく絶好の位置にいるのが日本人である。
 我々は二つの愚か者集団の何れをも支持せず、テロリストにテロをやろうという気を起こさせないようなやり方をしていく以外、テロの危険を少しでも減らす手段はない。(「『安全』への対極的な二つの道」参照)
 
 
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04 July

警察庁長官は他を非難する前に自らの非を謝れ

 一昨年来検察・警察の目に余る不祥事が次々に暴露された。その中で「報償費」という名目の公金が、裏金として不正に流用される「慣例」が、全国的に蔓延していることが明らかになった。北海道警の場合を除いて、そのほとんどはうやむやの内に世間から忘れられていった。それをジャーナリストとして追求していたのが鳥越俊太郎キャスターであり、公的ポストにありながら、執念深くその不正をただそうとしていた唯一の人が、浅野・宮城県知事であった。
 知事は宮城県警察の捜査用報償費が適切に執行されていない疑いがあるとして、今年度予算の内、まだ支出されていない分の執行停止を県警に通知していた。これについて、警察庁の漆間巌長官は、6月30日、「言語道断」と強く浅野知事を批判した。
 確かに警察の捜査には、公表できない「報償費」を払わなければならない必要性はあるだろう。しかし非公開をいいことに、それを私的に流用することが許されるはずはない。不正流用が全国各地に実在したことは、数々の動かし難い証拠によって裏付けられている。宮城県の場合も知事がその疑いを持ったからこそ、県警にその使途について説明を求めたのである。その知事の要求を県警は頑として拒み続けている。知事も情報提供者の身元まで明かせと要求しているのではないのだから、県警も自らやましいことがなければ、知事への報告・説明の方法については妥協の余地があるはずである。
 一方仙台市民オンブズマンが、2000年度宮城県警の捜査報償費に不正支出があったとして、県警会計課長に県警本部が支出した1950万円を全額県へ返すよう求めていた。6月21日に出された仙台地裁の判決は、原告側の請求は棄却したものの、「(報償費支出の)相当部分に実態がなかったと推認する余地がある」と不正支出の疑いを指摘した。オンブズマン側は、「報償費の不正支出を正面から認めた画期的判決」として控訴しなかった。これによって判決は確定した。
 このように裁判所までもが強い疑いを持っているのだから、県警の不正支出はあったと見るのが自然であろう。こういう全国警察にかけられている疑いを当然知っていながら、警察庁長官はそれについては言及も謝罪もすることなく、その不正をただそうとする知事を非難した。そんな資格が彼にあるのか。一体彼は、不正を正すという警察の役割をどう理解しているのか。不正への怒りを持たない人物が、不正をただすべき組織の長であることの空しさ。
 昨年1月、窒素ラヂカル子が「検察・警察全体の犯罪は誰が摘発するのか」という文章で告発したように、検察にも警察にも腐敗が蔓延している。そして自らを浄化する意思も勇気も持たない人と組織に再生の期待は持てない。
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