Archive for April 2005

18 April

花便り(11)4月の花木3種

1.シジミバナ(バラ科シモツケ属)Spiraea prunifolia
遠目にはユキヤナギに似ているが八重。八重の花では最小の部類。中央がへこんでいるので、漢名は笑靨花(しょうようか)。古く中国から渡来。和名は18世紀の「和漢三才図会」にその小さな花が「蜆の肉の如し」とあるのに基づく。
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2.カリン(バラ科ボケ属)Chaenomeles cinensis
これも中国原産。平安時代にすでに渡来と。雄花と両性花が混在。花の直径約3cm。秋に大きな実がなるが堅くて渋いので食べられない。果実酒、ジャム、ゼリーにする。陰干ししたものを咳止めにする。
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3.月桂樹(クスノキ科ゲッケイジュ属)Laurus nobilis
地中海沿岸原産。雌雄異株。写真は雄花。日本には雌株は少ない。葉はbay leafと呼ばれ、カレー、シチュー、スープのスパイスにする。日本では月の中でウサギが餅つきをすると見立てたが、中国では巨大な桂(モクセイ)を切る男に見立てた。明治時代にこの木が導入されたときに、香りの連想からこの字を当てたとされる。従ってモクセイとは関係がない。古代ギリシャでは、森へのレースで折り取った枝を勝利の冠にした。
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 外国旅行のため約10日間お休み。
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17 April

花便り(10)野草3種

1.ヒゴスミレ(スミレ科スミレ属)Viola chaerophylloides
 スミレといいながら葉だけを見たらとてもスミレとは思えない。エイザンスミレと似ているが、葉の切れ込みはさらに細かい。大陸系のスミレとされる。実際黄山の近くで咲いているのを見た。肥後の名前があるが、本州にも少なくない。
 スミレの権威、橋本保氏の「日本のスミレ」のよると、ヒゴスミレやエイザンスミレの分類学上の取り扱いは、古くから学者の頭を悩ませたものだそうである。
 鉢に植えているとこぼれ種でいくらでも増えていく。まとまるとなかなかのものである。我が家ではもう花が終わりかけている。


2.イカリソウ(メギ科)Epimedium macranthum
 主に丘陵や山裾の樹林に生える。写真は寺院の庭の、石組みの間に生えていたものである。花の形が錨のようだからこの名がある。4枚の花弁に2cmもある距があるからそう見える。三つに分かれた枝にそれぞれ3枚の心臓形の葉が付くのでサンシクヨウソウ(三枝九葉草)ともいうが、漢名の三枝九葉草は別種のものだという。


3.タマノカンアオイ(ウマノスズクサ科カンアオイ属)Asarum tamaense
 冬でもアオイのような葉が枯れないのでその名がある、カンアオイの仲間の一つ。多摩丘陵に多い。カンアオイはギフチョウの食草としてしられる。
 1年に1枚ずつ葉をつけるほど成長も分布速度も極めて遅い。筆者の場合20数年前に8号鉢に植えていたものを地植えにしたが、いまだにその鉢の大きさから出ない。そのため各地で地史的な長時間孤立し、種分化して数多くの地名を冠した種を生じることになった。東海・近畿にスズカカンアオイ、伊勢湾沿岸にアツミカンアオイ、四国にナンカイアオイ、九州にツクシカンアオイ、伊豆のアマギカンアオイなど。
 タマノカンアオイは4月頃、暗紫色の花を葉柄の根元に半分土に埋もれたように咲かせる。葉をかき分けないと見えないことが多い。花は美しさとは縁遠いが、爽やかな芳香を持つ。

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14 April

花便り(9)

1.カナクギノキ(クスノキ科クロモジ属)Lindera erythrocarpa
高さ15mにもなる落葉高木。雌雄異株。花便り(5)で述べたアブラチャンと同属。葉の展開と同時に開花する点、アブラチャンと異なる。黄緑色の小さな花が10個ほど集まって咲く。その雌花が秋に、放射状に付いた直径6-7mmの果実になって赤く熟す。名前は「金釘」ではなく、成木の樹皮がはがれた模様からの「鹿の子木」がなまったもの。宮崎県椎葉村では大晦日から正月7日まで、いろりの火を絶やさないように燃やす「ひのとぎ」に、カシと共にこの木を使うという。

2.ニワザクラ(バラ科サクラ属)Prunus glandulosa cv. Alboplena
庭の片隅にかぼそい、高さ50cmくらいの木が生えていた。その木に今年初めて花が咲いた。それも実に愛らしいピンクの花であった。蕾の時はシジミバナのような感じであった。名前を調べるのに苦労したが、ニワザクラと判明した。
 室町時代から栽培の記録があるそうである。サクラと名が付いていても、成木でも高さ1.5mくらいにしかならないという。狭い我が庭では好都合である。今日この種にしては大きい、幹の直径3cmくらいの木を近くの家で見つけた。花の直径1.5cm程度。花色は白か淡紅色。多くは八重で実がならないが、中には一重もあって結実し食べられるという。

3.シロヤマブキ(バラ科シロヤマブキ属)Rhodtypos scandens
もう普通のヤマブキも咲き始めたが、今日初めてシロヤマブキを見つけた。去年の実を付けたまま花が咲いていた。シロバナヤマブキというのもあってややこしいが、属も異なる。本種は1属1種。ヤマブキは葉が互生、花が5弁であるのに対し、本種は葉が対生、花が4弁。しかも花弁の大きさが異なる不整形の花が多い。
 果実は長さ7mmの楕円形で、4個集まって付く。実生でよく発芽するというが、我が家の試みはまだ成功していない。

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12 April

花便り(8)変わりツバキ

 散歩の途上、随分色々なツバキに巡り会う。今日はその中で変わったツバキを集めてみた。これらにはそれぞれ名前があるのだろうが、全くわからないので、ご存じの方は是非ご教示頂きたい。
 一本の木に全く違う形の花が共存している例を二つ見つけた。一体これはどういうことなのだろうか。花の中に小さい花が二つあるような奇妙なものもあった。しべが花弁化して八重になっていく過程と見られる事例は随分多いようだ。


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11 April

花便り(7)「カタカゴの森に咲く花」

1.カタクリ ユリ科カタクリ属 Erythronium japonicum
  本州、北海道、サハリン、朝鮮半島、稀に四国山中に産する多年生草本。古くはカタカゴ(堅香子)と呼んだ。 
 「もののふの八十(やそ)おとめらがくみまがふ 寺井の上の堅香子の花」
                 (万葉集 巻19)
 昔はこの鱗茎から澱粉をとり、それを片栗粉と称した。(今の片栗粉はジャガイモ澱粉) また若葉をおひたしなどにして食べたという。昔はそれほどふんだんに生えていたのだろう。
 関東平野でも落葉樹林の中に生えていることが多い。まだ木々の葉が茂らない早春に葉を出し、花をつける。葉が茂るまでの短い期間に急いで光合成をして、澱粉を蓄えるのだろう。種から花を咲かせるまでに約8年かかるといわれる。埼玉県では準絶滅危惧種に指定されている。
 「静原の山辺の森の下かげに ほのぼの咲ける片栗の花」 (新村 出)
 「かたくりに 残りし雪の いつ消えし」 (新井 石毛)
 各地で保護活動も盛んで、ボランティアが開花期に限って、解放しているところもある。この写真もそういう場所で撮ったものである。色といい形といい、実に魅力的な花で、ファンも多い。稀に白花があるという。
 カタクリ属は北米に十数種分布し、その中には黄色のキバナカタクリがある。

2.シュンラン ラン科シュンラン属 Cymbidium virescens
早春に開花。一茎一花。野生種のほか、黄花、紅褐花、斑入りなど変異種が多く、極めて高価なものがある。毎年の世界ラン展にも、優良花が出展される。花を塩漬けにする。
 「春蘭の 清げなそれの 忘らえず」 (細矢 喜代子)
 
3.クサボケ バラ科ボケ属 Chaenomeles japonica
学名通り日本原産。花は両性花と雄花が混じるという珍しい花。

4.ニリンソウ キンポウゲ科イチリンソウ属 Anemone flaccida
原則は1茎2花であるが、1輪の時も3輪の時もある。花弁と見えるのは萼。今年は花が遅れ、2輪揃って咲いているのは見つからなかった。写真では2輪目が蕾として見えている。
 「花に添ふ 低き蕾は 二輪草」  石田あき子
 「一花咲き 一蕾添へり 二輪草」 新村 寒花
 イチリンソウもこの場所にあるらしいが花はまだ見えなかったのは残念。

5.ワチガイソウ ナデシコ科 Pseudostellaria heterantha
10個のおしべの内、5個の葯が花弁の上に斑点のように見えている。葯の色が紫である点、茎途中の葉腋からも花茎を伸ばす点が、黄色葯で、頂部葉腋から花茎を出す、近縁のワダソウと異なる。この花とは別に下部の節から閉鎖花を出す特徴はワダソウと似ているが数は少ない。

6.ハナイカダ(花筏) ミズキ科ハナイカダ属 Helwingia japonica
 葉の真ん中に花を咲かせるけったいな植物。雌雄異株。展開し始めたばかりの葉の真ん中に早くも小さい花芽をつけていた。花は1個のようなので雌花であろう。雄花は一カ所に数個付く。
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