Archive for February 2005

23 February

DNA鑑定へのぬぐえぬ疑問

 もう旧聞に属するが、横田めぐみさんの遺骨と称する骨についてのDNA鑑定で、日本では検定結果の妥当性についての議論は全くされないまま、もはや否定しがたい「事実」として流布されてしまっている。いまその結果に異存、あるいは疑問を呈するだけで袋だたきになりそうな雰囲気である。
 しかしこの鑑定結果が出たときから、未だにぬぐえぬ疑問が残っている。それはDNA鑑定で、二つの資料からのDNAが一致した場合には、「両者のDNAは、同一人物のものである可能性が極めて高い」という結論は容易に導ける。ところが一致しなかった場合には、それが他人のDNAだという結論は容易には導けない。何故なら今回の遺骨は火葬され高温に曝されたものである。その過程でもDNAが化学変化を受けなかったということを証明しない限り、他人のDNAであるとは結論できない。これは全く専門家でない人にも容易に納得できる論理であろう。
 それなのにこれまでマスメディアやその道の専門家からも、その論理に基づいた疑問が提出されたものを目にしたことはない。気になってインターネットもかなり丹念に調べてみたが、ただの1件もそれらしいものにはお目にかからなかった。一体これはどうしたことだろうか。
 国と国の関係を決定的に悪化させうる重大な結論を出したからには、鑑定を行った帝京大学の吉井富夫氏は、その科学的な結果を公表すべきであろう。学会での討論に耐えうるものなのか、是非知りたいものである。
 資料1.5gはすでに使い切ったという話であるが、資料はなくても実験結果は残っているはずである。科学的な検証もしないで、これほど重大な結果を発表した政府も軽率のそしりを免れまい。しかも第三国での再鑑定は必要がないとしているのも納得できない。政府は北朝鮮には、その結果が科学的に間違いがないということを伝えたらしいが、それなら何故国内でもそれを公表しないのか。
 こんな議論をするのは政治的な意図では全くない。純粋に科学的な見地から疑問を提出しているだけである。科学的研究はそれが予想と反した結果が出たときこそ、大きな発見に繋がる可能性があるが、その結論を出す前に、実験や考察に落ち度はないか、見落としや勘違いがないか徹底的な吟味を必要とする。かつて科学的な仕事を生業とした経験からも、この点は慎重の上にも慎重でかければならなず、他の専門家との討議も欠かせないことを主張したいのである。鑑定は不可能という結論を出していた科学警察研究所の人の意見も聞いてみたいものである。
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17 February

京都議定書発効

 昨日16日、午後2時、京都議定書が発効した。日本も国際的にCO2削減義務を負う。1990年比排出量を12年までに6%削減しなければならない。ところが現在8%増となっているので、これから7年間で14%も削減しなければならない。とてもじゃないが達成は不可能だろう。
 02年度でいうと、産業部門は-1.7%と減らしているが、業務(オフィス・店舗など)は+36.7%、家庭+28.8%、運輸+20.4%と大幅増加であって、これらの部門のCO2削減が大問題である。
 この問題に関するテレビニュースで必ず出てくるものに、工場の煙突から出ているモクモクとした「煙」の映像がある。これは実に誤解を与える映像である。なぜならあの「モクモク」は、ほとんど「湯気」であって「煙」ではないからである。それは熱交換を最大限に行うという省エネの努力の結果、排気温度を極限まで下げているために、含まれている水分が「湯気」として目に見える。昔は煙るが見えていて、水は水蒸気のままなので湯気は見えなかった。あの映像を見たら省エネが徹底しているなと見るべきなのである。
 こういう誤解を与えるテレビの映像は色々ある。かつて貿易摩擦華やかなりし頃、必ず自動車の船積みの様子が写された。しかし日本の輸出の大半は資本財(中間財)、すなわち「部品」であって、自動車や家電のような組み立て済みの完成品は主役ではなくなっている。「部品」は絵にならないので相変わらず自動車が消費者に見せられて、大きな誤解を生む。
 話をCO2削減に戻す。運輸・民生部門の省エネは、各個人の痛みを伴う努力なくしては達成できない。こまめな消灯・消テレビ、省エネタイプの家電への買い換え、自家用車に代えて電車・バスの利用、パソコンのネットへの常時接続中止、待機電力節減、冷暖房温度設定の合理化、太陽光発電の導入、深夜営業の制限、通販利用による個別配達の最小化など、どれもこれも実行の困難を伴うものが多い。しかし人任せにしていたら、地球温暖化など必ず悪影響が個人に跳ね返ってくる。
 メディアによる啓蒙や学校での教育も重要である。炭素税の導入も避けて通れない。それにしても財界や経産省の後ろ向きの態度はどうしたことか。これでは京都議定書を蹴飛ばしたアメリカと同じではないか。
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15 February

NHKにはこんなによい番組がある

 この前は散々NHKに毒づいた。しかし本来NHKは民放では絶対に見られないよい番組を作ってきた。この2月ー3月教育テレビで放送されているNHK人間講座、『「共生経済」が始まるー競争原理を超えて』もその一つだ。内橋克人氏を講師とした番組である。
 ここで主張されていることは、目下の小泉内閣がとっている「市場原理主義」政策と対極にある考え方である。本当ならこの問題をめぐっては、国民を二分する大論争があってもよいのだが、国会でも論壇でも、かみ合った議論にはなかなか巡り会えない。
 その意味で、火曜日午後10時25分から25分のこの番組は、大きな問題提起になるはずである。テキストも今販売されている。期待して見ていきたい。
23:19:34 | archivelago | | TrackBacks

11 February

北朝鮮の意図は

 北朝鮮外務省は10日、「6カ国協議への参加を無期限中断」を声明し、核兵器保有を宣言をした。またまた瀬戸際外交である。一体何を狙っているのか。
 「米国が核の棍棒を振り回して我が制度を抹殺する企図を明白にした以上、・・・」というが、ブッシュ大統領の一般教書演説では、北朝鮮へはほとんど言及せず、第一期のそれよりむしろ穏健路線と見られていた。イラクを抱えて米国が軍事行動を起こす余裕は全くないと、北朝鮮に足元を見られたとも考えられる。日本との拉致問題の行き詰まりも、協議不参加の一因になったであろう。このところ軍部の発言力が強まった形跡もある。
 本当に核兵器を手にしたのかは疑わしいし、ましてミサイルに搭載できるほど小型化に成功したとはとても考えられない。それでも北朝鮮は核保有を最強の交渉カードとして利用してくるだろう。
 米国の強硬派を強く刺激したことは確かであるし、これまで6カ国協議を取り持ってきた中国の面子を潰したことも明らかである。
今後米中がどう出るか大いに注目される。6カ国協議が駄目なら、安保理付託という道筋が見えてくる。そうなればもはや中国の支持も期待できず、北朝鮮にとっては孤立化を深めるだけである。
 日本としてはより冷静に、米中韓と密接な連携をとることが今まで以上に必要になろう。
 
22:45:19 | archivelago | | TrackBacks

08 February

NHKニュースの不快

 NHKの7時のニュースにはしばしば不愉快にさせられる。番組内容への政治介入問題で、一方的な情報を垂れ流すからである。今日も自民党政治家側の、わざと本質をそらした議論を長々と流し、他方の朝日新聞の言い分には僅かに触れるだけ。
 政治家側は、「呼びつけていない」とか「会ったのは放送後だ」などと、本質を離れたことばかり声高に主張するが、本質は放送前に陰に陽にNHKに圧力をかけ、検閲に当たることまでやっていたということである。NHKの前幹部は、事前に番組内容について説明するのは当然だとまで言った。開いた口がふさがらないというのはこのことである。
 それならそうとNHKはジャーナリズムであることを放棄したと宣言し、政府の御用機関に徹したらどうか。そうすれば国民もそのつもりで番組を見るし、受信料を払わずに済む。
22:50:01 | archivelago | | TrackBacks