Archive for 04 March 2005

04 March

園芸業者のいい加減さ

 ここに示す最初の写真はクモマグサ(雲間草)として園芸店で売られている花である。そのラベルには、原産地日本の本州中部や北海道の高山と書かれ、Saxifraga merkii Fisch. Var. idzuroei Engle.という学名が記されている。この学名は日本古来のクモマグサに与えられた名である。クモマグサは本州中部の高山に生え、7-8月頃白い花を咲かせる。北海道には分布していない。
 今頃園芸店で売られている花はこれとは異なり、ヨーロッパの高山に生えているクモマグサによく似た原種から、イギリスなどで交配育種されたものだそうである(ネット上の錦幸園花便りによる)。従って元々種が異なり、学名は上記のものとは当然違っているはずである。米村花卉コンサルタントのネット上の図鑑では、Saxifraga rosaceaの名が記されている。日本名もヨウシュクモマグサ、セイヨウクモマグサ、バイカクモマグサと色々である。
 
 このように園芸店で書かれている名前は、いい加減なものが実に多い。もう一つの写真はハナカンザシである。これはヘリクリサムの名で売られていることも多い。この名は、オーストラリア原産のムギワラギクHelichrysum bracteatumに似ていることから、勝手につけられたものであろう。正しくはRhodanthe chlorocephala ssp. roseaである。この他にもヘリクリサムの名で流通している植物が少なくとも4種類はある。
 
 我が家にあるものだけでも、ベニバナヒメフウロErodium reichandiiが単にヒメフウロとして売られている。しかし日本には在来種ヒメフウロGeranium Robertianumが存在する。学名からわかるように別属である。ユウゲショウはアカバナユウゲショウと呼ぶべきである。ユウゲショウはオシロイバナの別名である。前の記事のレンテンローズをクリスマスローズとして流通させたのも一例である。これらの誤りは図鑑でも踏襲されていることがあって混乱に輪をかけている。
 
 これらが単に呼び名の違いにとどまっていればよいが、これらが野生化して交配し、原種自身が絶滅に危機にあるものや、名前の間違った品種を親として交配され、あたかも原種を交配親としたものとして扱われることも起こっている。植物を生産し流通させる業者は、もっと責任ある仕事をして欲しいものである。
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