Archive for 15 March 2005
15 March
暖かけりゃ早く花が咲くとは限らない
1週間足らずの小旅行から帰ってきたら、我が家の庭も少し様子が変わっていた。沈丁花は満開に近く、ボケとヒイラギナンテン(写真)が咲き始め、地植えのプリムラ、屋外のヒヤシンスが咲いていた。ウメザキウツギ(利休梅)、シャクナゲ、モクレンの芽も随分大きくなった。ヒゴスミレ、ニホンサクラソウの新葉が伸び始めた。歳を取ってもやはり春は浮き浮きしてくる。桜開花予想も出始め、やがて春爛漫、花の饗宴が始まる。最近は桜前線に異常が見られるという。開花時期の南北逆転がしばしば見られる。温暖化の影響が語られるが、開花現象の生理から見れば不思議ではない。
春に開花する植物の花芽の多くは、夏の終わりに形成されたのち休眠する。それが一定の寒さの刺激によって目を覚ます。これを休眠打破という。一旦休眠打破された花芽は、暖かければ暖かい程早く開花する。ところが通常なら休眠打破が行われるはずの時期に暖かいと、いつまでも眠ったままである。桜の場合には12月がその時期であるが、昨年末暖かだったので、休眠打破が遅れた可能性がある。そうなると開花時期は遅れる。
そのため南国鹿児島の桜が、豪雪地より遅く咲くという現象も起こる。奄美大島のソメイヨシノは5月頃に開花するという。これは北海道南部と同じ時期である。桜の開花の予想が難しいのはこのためである。
植物の休眠は花芽だけではない。種子・塊根・鱗茎・球茎などでも起こる。これらの休眠は発芽に影響するので、地球温暖化が野生植物に及ぼす悪影響が懸念される。
温度は花芽形成や花茎伸長にも影響する。デンドロビュウムの花芽形成は10度前後の低温に20日程曝されて促進されることが知られている。従って秋に余り早く室内に取り込むとかえって花の付きが悪くなる。クンシランの花茎は低温に曝さないと伸びにくく、早く室内に取り込んだものは花茎が伸びず、葉の間で咲くことになるという。
最近の生物学の進歩は急速であるが、休眠、休眠打破の分子機構についてはどの程度わかっているのだろうか。きっと驚異的なメカニズムがあるに違いない。花も美しいが、生物の分子機構もそれに劣らず美しく精緻なのが普通だから。誰か教えてくれませんか。
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