04 April

ああ 民主党

―君たちはどういう党を作りたいのか―

 偽メール事件を巡る民主党の、色々な意味での余りの愚かさに、発言する気も失せていた。そして今、後継代表選びでも醜態をさらけ出している。どこまで落ちぶれたいのか。
 
大新聞は一斉に小沢への流れを憶測だけで流しているように見える。どんな調査をしてそういうのかは不明である。そこで報じられるのは、「自民党にとって小沢は最も手強い相手」「党内の小沢アレルギーをどう克服するか」「壊し屋の小沢でうまく行くのか」「小沢にとってこれが最後のチャンス」「誰を出した方が得か」などばかりで、小沢がどういう思想信条で党運営をやっていくのか、自民党との政策上の違いをどう打ち出すのか、については実に情報に乏しい。
国政選挙であれほどマニフェストの重要性を主張するのなら、自分たちの代表選挙でも当然ながら、自分の思想・信条・政策をひっさげて、何人かの候補者が競い合い、党員は自分に最も考えの近い人を選んで投票してこそ、国民にも開かれた公党と呼べるだろう。その点自民党党首選の方が、例えば小泉と亀井では国民の目から見ても違いがはっきりしていた。

もともと自由党を作った小沢は、自民党より右と見なされていたはずである。その考え方が変わったのか国民には全くわからない。それというのも昨年旧社会党出身の横路と小沢とが、安保政策などで話し合いをして完全に合意に達したと報じられた。その為だろうが、このグループはいち早く小沢支持を打ち出した。
それならそうと、どういう安保政策で党を運営するのか小沢は明確にマニフェストとして示すべきである。記者団に囲まれて意欲があるとかないとか、「禅問答」みたいなやりとりをするだけでは、国民は小沢民主党の姿を思い描く事ができない。
もう一人の有力候補菅も、なんら自分の考えを打ち出すことなく、風見鶏のように党内情勢を推し量っているようでは、実に古くさい党の体質といわれても仕方がないだろう。今日の朝日新聞夕刊によると、党も菅直人も話し合い一本化では密室談合といわれ、選挙決着となればしこりが残るというジレンマにあるという。冗談じゃないといいたい。
自分が代表として一党を率いていくのであれば、当然党運営の基本政策を持っているはずである。それを堂々と党員および国民に訴えて、代表に選ばれたら、党内に自分の考えを浸透させていき、いずれはバラバラの党内の考えを一本にまとめてゆく覚悟がなければならない。その覚悟がなくては代表になる資格がない。

前回前原が選ばれたときにも同じ事が起こった。前原が自民党より右寄りの安保・防衛政策を持っていることは、党員であるなら誰でも知っていたはずである。それなのに、ただイメージ上、若い前原がよいという判断で、前原に投じられた票がかなりあったに違いない。前原が代表就任後、自分の安保政策を党の政策にすると公言し、中国脅威論をぶちあげたとき、「こんなはずではなかった」と思った前原支持票も相当あったのでないか。筆者は前原路線には到底ついて行けないが、彼が党内議論を経た上で自分の考えを党の政策にすると主張していた覚悟だけは、高く評価したい。

国民から見ると、自民党と同じような政党がもう一つあっても何の意味もない。政権交代をするというのなら、はっきりと自民党とはここが違うという党の基本理念を打ち出すべきである。自民党が今後とも小泉流の新自由主義、市場原理主義路線を続けるのであれば、民主党はそれとの対立軸をはっきりと国民にわかる形で明示しなければならない。代表選はその為の絶好の機会である。その機会をむざむざ駆け引き、密室談合の場にしてしまうのは全く馬鹿げている。

落ちるところまで落ちた民主党のイメージをどう上げてゆくのか、熱情を持って国民に訴えてゆく政治家は民主党にはいないのか。どうしても政権交代がなければ政治の浄化・進歩はないと信じるが故に、その可能性を持つ唯一の政党としての民主党には、苦言を呈せざるを得ない。
          (2006.4.4)

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31 March

検察は控訴を断念して改めて真相に迫れ

―日歯連のヤミ献金問題で「政治検察」の汚名を濯ぐとき―

 日歯連のヤミ献金問題に絡む3月30日の村岡裁判で、東京地裁は被告に無罪を言い渡すと同時に、検察に対する強い不満をにじませた。これは全く国民の見方に一致する。検察審査会も橋本元総理不起訴は不当としたのに、検察はそれをはねつけた。まさに時の政権に配慮した「政治検察」そのものである。

 それにしてもかつての同僚に無実の罪をおっかぶせたまま、のうのうと暮らしている橋本元総理は、どんな心境なのだろうか。判決は「橋本は政治資金規正法上の平成研の代表者であることに照らし、同法違反(不記載)の罪に問われる可能性は相当高い」とまで踏み込んだ。
1億円受け取りの席にいたとされる青木参院議員会長と野中元幹事長の、しれっとした記憶喪失にもあきれるほかはない。一体彼らは1億円を何に使ったのか。1億円もらっても覚えていないような政治家に、いくら献金しても無駄というものである。

 この問題には単に旧橋本派への闇献金にとどまらず、日歯連側が自民党の政治資金団体「国民政治協会」(国政協)をう回して国会議員に献金したとされる疑惑がある。日歯連は厚生労働関係を中心とした自民党議員にカネを配る一方、国政協に毎年4〜6億円に上る巨額の資金を寄付する方法を巧みに組み合わせていた。

 うち、国政協を通じたいわゆる“う回献金”に関しては、政治資金規正法違反容疑で有罪判決を受けた日歯連元幹部が、当時厚生労働政務官だった自民党衆院議員ら五人に計四千万円を献金したと供述。特捜部が捜査を進めたが、「議員への資金配分に国政協側の意思が働いている上、献金の趣旨があいまい」とされ、立件は見送られた。

 ただ国政協については、ゼネコン汚職やKSD事件など過去の大型汚職事件でも捜査の壁として浮上。そのたびに国政協が献金の“洗浄装置”になっているのでないかとの指摘が聞かれた。国政協を通じて特定議員に渡るカネは、「自民党の経理責任者が“ひもつき” 献金と認めない限り、贈収賄などの立件は難しい」(捜査関係者)のが実情である。
 判決は国政協の「不透明な献金処理」にも言及している。しかし06年10月に成立した改正規正法でも、迂回献金の禁止は見送られた。自民党にとってこの迂回献金ルートは欠かせない資金集め方法になっていると見える。政治資金の不透明性を正そうという動きが、政治の中から全く出てこないのも、救いがたさを感じさせる。小泉改革には政治資金改革は含まれないらしい。
 それにしても最近の検察には不信感を持たないわけに行かない。政治家の巨悪は見逃すが、反政府的活動家と見なされると、ビラ配りという微罪でも拘留・起訴にもってゆく。巨悪にこそ「秋霜烈日」であって欲しいもの。今度の判決を機会に、無駄な控訴は取りやめて、巨悪・真犯人の逮捕・起訴に注力してもらいたい。

22:36:25 | archivelago | | TrackBacks

24 March

まるでヤクザの立ち退き料8700億円

―国会議論もなく米戦略に組み敷かれ―

 窒素ラヂカル子は、一昨年の秋から「米世界戦略に組み込まれる日本 ―米提案を拒否して独立を守れ―」「国会形骸化の向こうに見えるもの ―国民はどこへ連れて行かれるのか―」および「国民の知らない間に進む日米軍事一体化 ―テレビが若貴スキャンダルを垂れ流す間に―」で、米軍再編に絡む問題での、小泉内閣の徹底した国会回避の姿勢を批判してきた。これから少なくとも数十年は日本を制約するであろう米国の戦略再編への組み込みについて、ただの一回も国会での議論をしなかった。当時の町村外相も、「まだ話し合いの途中だから」と逃げ回った。
 そして昨年10月29日、外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(いわゆる2プラス2)で、在日米軍再編に関する「中間報告」が発表された。これはさらに今月中に最終報告として決着することになっている。しかしその中に盛り込まれた計画は、関係する地元に相談なしに決められたものなので、公表後ほとんどの地元自治体は反対の声を上げている。政府は誠心誠意説明して地元の了解を取り付けたいと言うだけで、成算があるわけではない。

 中でもほとんどの国民を驚かせたのは、沖縄に駐留する海兵隊15000人のうち、8000人をグアムに移す費用は100億ドル(1兆1600億円)で、その75%(8700億円)を日本が負担せよという要求である。そもそも海兵隊は日本の防衛力として予定されておらず、いわば日本は駐留場所を提供しているだけである。極東条項を形骸化させて、沖縄基地から海兵隊をアフガンやイラクへ派遣する。それを米国の再編策としてグアムに移転するのであって、日本としては「そちらの勝手でしょう」といえる話である。
 それを沖縄の基地縮小の強い要求があることを奇禍として、日本の都合で移るのだから移転費用を負担せよと言うのである。しかもあまりにも法外な金額である。これまでも「思いやり予算」という世界的にも例のない駐留経費、年間2300億円を負担してきた。日本は要求すれば金を出すと見くびられる原因にもなっている。本当に馬鹿にするのもいい加減にしてくれといいたい。
 沖縄返還時に、当然米国が負担すべき経費を、日本が肩代わりした密約が当時の外交当局者によって明らかにされた。政府は今でもそんな密約はなかったと言い張っている。こんな嘘を政府がつき続けるのは政府の信頼性を著しく傷つける。今回もそういう密約を結ぶ気か。
 ローレス国防副次官は朝日新聞との会見で「グアムには、海兵隊だけでなく、空軍、海軍も合わせた主要な拠点を作ろうとしている」と述べている。すなわち米国の戦略上の必要から海兵隊の移転も考えているということだ。また「関連するインフラ整備を合わせて約100億ドルと推計している。米国はこれを大きく上回る全体の再展開費用を負担するのだから、日本に海兵隊移転に必要な経費の約75%の負担を求めるのは、きわめて妥当なことだ」とも述べた。
 米国の主張の根底には、日本の防衛費がGDPの1%しかなく、米国3%以上、韓国2.5%、中国4%以上、シンガポール5%以上と比較して少なすぎるという考えがある。しかし防衛費にその国がどれだけ支出するかは、その国の国民が決めることであって、他国から多いの少ないのと文句をつけられる話ではない。支出が多ければ他国にとって脅威にもなろうが、少ないのは日本が専守防衛という、世界に誇るべき方針を採ってきたからに他ならない。

思いやり予算はまだ日本国内の基地に関するものであったが、今回は米領土であるグアムにつくる新たな基地施設などに使われるものである。外国に作る施設に日本の税金を使うなどということは、法律も想定していないことである。政府は新しい法律を作ることを考えているそうであるが、貸付金として出す案もあると報じられた。しかしそれには何年か後には債権放棄でうやむやという危険もある。

 いまや米国の世界的な軍事戦略に諸手を挙げて賛成という国はほとんどないだろう。突出した軍事支出が、産軍政のコングロマリットの利益のためだということを知らぬ人はいない。アイゼンハウアー元大統領が懸念し警告した通りになってしまった。国連の了解もなしに始めたイラク戦争は、事実上の内戦状態に突入し、収拾のめども立たない。今の小泉内閣の無戦略では、そんな誤った米戦略に巻き込まれて日本も抜き差しならぬ立場に陥るだけだろう。戦略がないから国会での議論にしたくないのである。
 今回の交渉経過を見る限り、日本は米国の属国としか思えない。占領時代の統治・被統治の関係がいまだに続いていると見られる。この関係は自民党政治が続く限り変わらないだろう。もっともいまの前原民主党でも変化の期待は持てない。対米関係、対アジア関係を根本的に見直し、大きな戦略の下で外交を展開するスケールの大きい政治家は出ないものか。

              (2006.3.24)

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19 March

“誰が何の目的で”を追求せよ

―偽メール事件の深層は?―
 
民主党がつかまされた偽メールは、政府・与党がいわゆる4点セットでの追及をかわすのに絶大な威力を発揮した。民主党は幹部の問題解決のまずさもあって未だに立ち直れず、野党第一党の存在はなきに等しくなっている。
これほどに野党つぶしに威力を発揮した偽メールなのに、このメールを「誰が、何の目的で」民主党につかませたのか、政界でもメディアでも表だって追求しようという動きが感じられない。一体何故なのか。矛先は民主党と永田議員に向けられるだけである。しかしある政治的目的を持ってこのメールが利用されたのであれば、その罪は永田議員の比ではない。
民主党はいわゆる仲介者を公表し、その人に金を払ったかどうかも明らかにすべきである。その仲介者としてすでに実名がネット上では飛び交い、ガセネタ作りとして札付きで、週刊誌などにも同じものを持ち回ったという話もあって、金目的であるなら事は単純である。しかし本当にそうか。その後ろで糸を引いていた、あるいは金で動かした人や組織はなかったか?
小泉首相は永田議員の爆弾質問の後、早い時期に「ガセネタ」と断定した。これは裏の事情に通じていたことを意味しないか?

全く次元の違う話であるが、本ブログの、現在の政府・与党を批判する文章をねらい打ちするように、嫌がらせと思われる英文のコメントが、きわめて短時間のうちに数十通も集中する。文章はきわめて短く、ほめ殺し的な文章もある。Good job ! だの、Excellent workなどの言葉がある。これは個人の作業によるのではなく、金を使った組織的ないやがらせと見られる。
これは本ブログに限ったことではないらしい。狙われる文章は、決まって政治的で、現状批判をした文章のようである。一体誰がこれをやらせているのか。何の根拠もないので、決めつける訳にはいかないが、推理小説と同じように、これによって誰が利益を受けるかを考えれば、「犯人」を推測して誤る事が少ないだろう。

なお今の自民党は、米国に学んで、政権批判情報に目を光らせている。その中心人物が去年の選挙でも絶大な功績のあったとされる、世耕弘成議員である。「コミュニケーション戦略チーム」を率いる彼は、NTTの企業広報を担当していた広報のプロである。(彼らの考えに警告を発した文章を、一昨年の1月に、『山本一太・世耕弘成両議員の「闘論」を聴いて ―政府の情報操作はまっぴらだ―』というタイトルで「窒素ラヂカルの正論・暴論」に書いた。自民党は、政府・与党のためにならないと思われる情報は、どんな小さなものにも目を光らせて対策をとっていると見られる。選挙前にはブロガーを集めて懇談会も開いた。

 一見何の関連もないと思われる事象も、ある仮説によって結びつければ、その深層があぶり出されてくることもあるので素材として提供してみた。
                (06.3.19)

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13 March

「ミメティスム」の克服

 2月20日の朝日新聞夕刊で、「ミメティスム」という言葉を初めて知った。フランスの政治哲学者A. ブロサ・パリ第8大学教授の提唱する概念だという。Mimétismeという言葉は元来生物学の「擬態」という意味らしい。ブロサ氏によれば「自分のしたことを条件反射的に相対化する論理」だという。日本語では「仕返し主義」「模倣の論理」などの訳語が候補に挙がっている。(しかし余りよい訳語とは思えない)
 
 それは日本の政治家や保守的な言論人からしばしば聞かされる言葉、例えば「先の戦争は日本だけが悪いのではない。仕方なく始めさせられたのだ」「アジアの植民地支配を先に始めたのは日本ではないのに、どうしていつも日本だけが悪者にされるのだ」「確かに殴ったかもしれないが、僕らがやって以上に殴り返されたじゃないか」「日本は侵略したことがあるかもしれないが、それによって植民地の独立に大いに貢献した」といった論理である。
 そして彼らは、先の戦争を反省することを、自虐史観に囚われていると非難する。しかし過去の悪いことを反省し、二度とそういう過ちを繰り返すまいと決意することの方が、彼らのミメティスム的論理より遙かに勇気が要り、遙かに建設的である。
 
ブロサ氏は、過去を巡って日本とドイツの違いが最も顕著に表れるのは、ミメティスムに囚われているかどうかだという。西ドイツでは60年代に若者達が「父親達が何をしたのか」を問いつめることなどを通じて、ミメティスムから脱却し、政治指導者も国民の圧倒的多数も、ドイツ人の名において第三帝国の下でなされた戦争犯罪の責任を引き受けるようになったというのがブロサ氏の見方である。

 初来日のブロサ氏にとって日本での驚きは幾つもあった。北方領土、竹島、尖閣諸島などの領土紛争がいまだに尾を引いていること、小泉首相の靖国参拝、そしてその靖国参拝に対して若い世代の政治家から批判の声が上がらないことなど。
 ブロサ氏はいう。「西欧では二度の大戦での壊滅的な災禍が、ミメティスムでは何も解決しないという暗黙の了解を人々の間に生み出した」「仕返ししても何も解決しない。相手の立場を理解しようとする普通の人たちの開かれた態度が、西欧に暗黙の了解を成立させた」「二度経験しないとわからないものでしょうか。日本は、もう一度の経験が必要なのですか。空恐ろしいことです」
 
これらの指摘は至極当然で、窒素ラヂカル子がかねて憤りを込めて主張していることばかりである。あの戦争の開始や敗北を総括することもなく、極東裁判の不当性を主張するばかりで、A級戦犯を祀った靖国神社を首相が参拝しても、約半数の国民がそれを支持する日本。その上、近隣諸国に対して過去の失敗への反省を何回も公式には表明しながら、その反省や謝罪を疑わせるような言動を繰り返す政治家。その言動への批判を繰り返す外国に対して、「毅然として反論する」ことに小さなナショナリズムを満足させるだけの国民。しかもそのナショナリズムを強固にするために、「国を愛する心」を盛り込んだ教育基本法の改悪に乗り出そうとする政治。実に愚かというほかない。ブロサ氏がいうように、日本はもう一度同じ過ちを繰り返すつもりなのか。

最近読んだ文章の中で最も心に残ったものは、辺見庸氏の「小泉時代とは」という寄稿である(朝日新聞,06.3.8)。「政治のショー化、有権者のサポーター化といった現象が、イメージ偏重型である小泉首相の登場を引き金に、この国でも顕在化した」とする。
「一犬虚に吠ゆれば万犬実を伝う」を地で行ったのが、小泉政治の5年間であったという。一犬である小泉首相がでたらめを語ると、万犬すなわち群衆はそれを真実として広めてしまう。その群衆の危うい変わり身と、それに拍車をかけた「一犬」と「万犬」をつなぐメディア、特にテレビメディアにひやりとしたものを感じるというのである。ショー化した政治は「ファッシズムよりましというだけで、民主主義ではない」と断じたレジス・ドブレの言葉に、氏は一つの問いを継ぎ足す。「日本は本当にファッシズムではないと断言できるのか」と。
先の選挙における小泉首相の演説はヒトラーそっくりであった。複雑で多岐にわたる政治課題を、単純化し、黒か白かで選択を迫る。そしてそれを繰り返し繰り返し、熱情をもって、断固とした口調で、騙しのテクニックを駆使し、すり替え論理を使って、断定的に訴える。嘘も百回つき続ければ本当と思われるという、まさにヒトラー流である。

こういう劇場政治が進行する中で、最近の日本国民に、ミメティスムがかなり広く受け入れられる雰囲気が出てきているように思われる。それが小泉首相の靖国参拝とそれへの中韓両国の反発が、その傾向に拍車をかけたのは間違いない。

9月に小泉時代は終わるらしい。しかし小泉より右派の安部晋三官房長官が首相として登場するのでは、近隣外交は停滞したままであろう。町村外相時代にも窒素ラヂカル子は、「劣化する政治家の外交センス」という文章で批判したが、現在の麻生外相はそれに輪をかけて外交音痴である。「中国は脅威」とか、「台湾は国」とか公言し、無用の摩擦を積極的に引き起こす。外国にけんかを売るのなら外務大臣なんか要らない。

自民党総裁が首相になることは間違いない現在、その投票権を持つ自民党員には、ミメティスムを克服できる人物を選ぶ良識を期待したいのだが。
                  (06.3.13)

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