Complete text -- "やはり躓いたホリエモン"

18 January

やはり躓いたホリエモン

 昨年3月、このブログで筆者はホリエモンについて、「(新聞のインタビュー記事で)『金でできないことってありますか?』と彼が反問していたのを読んだ。その時『こんな考えではいずれ必ず躓くな』と思った。」と書いた。その予言は早くも当たってしまったようである。

 1年も経たないのに、1月16日、特捜部はライブドア本社、堀江社長自宅、新宿のサーバー設置場所その他の強制捜査に乗り出した。容疑は証券取引法違反。「偽計取引」と「風説の流布」の疑いがあるというものである。はじめの容疑は子会社に関する二つの容疑が挙げられていたが、今日の報道では、ライブドア本体の決算にも粉飾の疑いが浮上したということで、株式市場はネット関連企業にとどまらず、二日間400円を超す大幅の、ほぼ全面安となった。
 もしこれが事実なら、ホリエモンは経営者として話にもならない食わせ者だったということになる。ライブドアの株式は二日間買い手が付かず、ストップ安の連続である。恐らく株式の価値はゼロに近くなるのではないか。実に1兆円近い時価総額が、数日でゼロに近くなるという、前代未聞のことが起こることになる。

 昨年10月、楽天がTBSの買収に動いた時期、楽天やソフトバンクの時価総額を取り上げて、筆者は「一体こんな評価が正しいのか。答えは市場が決めたのだから正しいということになるのだろうが、何か腑に落ちないものがある。こんな虚か実かわからないような数字で、会社が買ったり買われたり、企業の支配権が移動したり、また社員の運命が決まったり、市場原理主義とは、何といい加減なものかという気もする。」と書いた。
 ライブドアの時価総額についても全く同じ事が言えたわけで、ネット企業の成長率がどんなに高いといっても、成長は無限に続くはずもないし、あの数字はバブルというか、「虚数」に近いものといえた。しかし「虚数」であったとしても、現実には「株式交換」という手法によって、いくらでも他社の買収が可能である。
 ホリエモンは特に証券取引法の盲点を突いた、「違法」ではないが「脱法」であるマネーゲーム手法を駆使して拡大の道をひた走ってきた。だから彼の歩いた道の後に、法律の改正や証券取引所の自主規制が後追いしてきた。ニッポン放送株大量取得が、時間外取引で行われた例、1年の内にライブドア株一株の百分割を2回も行って、一時期需給関係の崩れで急騰する時価総額をフル活用する手法がそれである。
 法律さえ犯さなければ、金儲けのためなら何をやってもいいという彼の哲学がよく表れていた。その範囲であれば、まだ世間は許したかも知れない。その証拠に自民党は亀井静香への刺客として、彼を無所属ながら全面支援をして送り込んだ。有権者にも彼を支持する人は少なくなく、敗れはしたものの亀井に肉薄した。最近経団連はライブドアの参加を認めた。

 しかし本体の粉飾決算となれば、全く話は別である。これはもう立派な重大犯罪である。04年9月期の売上高に、傘下会社の資産を上乗せして、本来10億円の赤字だったのを、単体14億円の黒字にしたというのである。それはライブドアが、近鉄バッファローズの買収に名乗りを上げ、世間の注目を浴びていた時期に重なる。

 株式市場の日経平均は2日間で実に900円も急落した。それに東証が約定件数が400万を超えたら、システムの限度を超えるとして全銘柄の取引を停止すると発表したことが混乱に拍車をかけた。実際に2時40分取引は停止された。ホリエモンは国内外の無数の投資家に莫大な損害を与えただけでなく、日本の株式市場の国際的な信用を著しく傷つけたことになる。
 この混乱がいつまで続くか分からないが、最近の株高にそそのかされて、株式取引を始めた素人が相当数居るはずで、彼らが負った傷も浅くないだろう。昔から素人が市場に参加するようになったらもう「相場」は終わりに近いと言い慣わされてきた。今回きっかけこそ前代未聞だとしても、やはりこの格言は生きていたのか。
 それにしても罪深いホリエモンよ。人間、もう少し謙虚でなければならなかった。また金以外にも大事なものがあることを知っておくべきだったろう。

23:14:50 | archivelago | | TrackBacks
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