Archive for April 2006

30 April

花便り(125) 緑色のウコンザクラとギョイコウザクラ

 もう時季はずれになってしまったが、緑がかったサクラ2種。家から2kmほど離れた所に、昨年満開の両者が同じ所に植えてあるのを見つけてあったので、今年は妻を誘ってその車で出かけていった。
ウコンザクラ(鬱金桜)はオオシマザクラ系のサトザクラだそうである。整った八重で、はじめは淡黄緑色であるが、徐々にピンク色が出てくる。満開の時は実に見事である。靖国神社その他、各地に有名なウコンザクラがある。
「鬱金」はショウガ科の多年草ウコンの根茎からとれる黄色の染料。



ギョイコウザクラ(御衣黄桜)はもっと緑色が強く、花の姿はやや乱れた感じである。これも時間がたつにつれて中央がピンクを帯びてくる。「御衣黄」の語源は調べたがわからない。


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22 April

花便り(124) 我が家の花(4)

 花が咲いては散ってゆく。多くの花の命は短い。この季節、花好きには心躍る季節であると同時に、散りゆく花への哀惜の思いを強くする季節でもある。今日ボタンとモッコウバラが開花した。その写真はいずれここに載せるとして、今日は比較的じみな花を数点紹介する。

1.サクラソウ3種(サクラソウ科 Primula sieboldii
 サクラソウの収集家だった家内の友人のご主人が、数年前沢山の収集品を残して亡くなられて、その3種を頂いて育てているものである。06.4.19撮影。
今では自然界ではほとんど見られなくなって、絶滅危惧種2類に指定されている。江戸時代から多くの品種が作出されてきた。インターネットで埼玉県花と緑の振興センターで保存されている約300種の花の写真を見ることができる。
 「武蔵野」:表はほとんど白、裏が紫の比較的大輪種。
 「南京小桜」:紅紫色に白の縁取りのある魅力的な小輪が上向きに咲く。
 「銀孔雀」:ほとんど白。




2.ミツバアケビ(アケビ科アケビ属) Akebia trifoliata
 普通のアケビが5出複葉であるのに対し、本種は3出複葉である。雌雄同株。花は濃紅紫色。花序の先端には小さい雄花が10数個、基部側には大型の雌花が1〜3個つく。果実は長さ約10cmの液果で、熟すと自然に裂開する。果肉やあつい果皮は食べられる。我が家ではまだ結実したことがない。06.4.15撮影。


3.タマノカンアオイ(ウマノスズクサ科カンアオイ属) Asarum tamaense
 多摩丘陵で発見された。つややかな葉をかき分けてみると、半ば地に埋もれるように地味な花が咲いている。形の怪異さに似合わず、実に甘いいい匂いを持つ。06.4.19撮影。
 カンアオイ属の分布拡大速度は極端に遅く、1km広がるのに1万年もかかるという。我が家のものはもう20年ほど鉢植えだったものを地植えにしたが、鉢植えだった頃から株の大きさはほとんど変わっていない。タマノカンアオイの太平洋側東端は高尾山だとされている。カンアオイ類はギフチョウの食草として知られている。かつては多摩丘陵にもギフチョウが広く見られたらしい。
前にも書いたことだが、徳川家の葵の御紋は、同属のフタバアオイの葉をデザインしたものといわれる。



4.アジュガ(シソ科キランソウ属) Ajuga reptans
 草姿はジュウニヒトエに似、下部から地上を這う長いランナーを出す点ではツルカコソウに似ている。本種は花が密について華やかなので、ヨーロッパから中央アジアに分布する品種か、それから作出された園芸種と見られる。06.4.19撮影。


5.シロバナエニシダ(マメ科エニシダ属) Cytisus sp.
 手持ちの図鑑4種にはそのものズバリの記載がないが、どうみてもエニシダである。普通の黄色い花の咲くエニシダより花が小さい。冬の間からぼちぼち咲いていて、やはり今が盛りである。シロバナセッカエニシダという、茎が石化した変種があるが、その母種かと思われる。06.4.19撮影。

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17 April

花便り(123) 4月の雑木林の中で

 ソメイヨシノが満開を告げる頃、雑木林の中もひっそりとではあるが春が頭をもたげている。この風情も捨てがたい。4月上旬のある日のスケッチである。

1.カタクリ(ユリ科カタクリ属)とタチツボスミレ(スミレ科スミレ属)
 カタクリについては昨年も書いたのでここでは省く。
 タチツボスミレはこのあたりでは最もよく見るスミレである。我が家の庭にもあちこちで咲いている。芭蕉が「山路きて何やらゆかしすみれ草」と詠んだのはこのスミレだという説がある。
大工道具の墨壺に似た距は昆虫を誘う密壺である。ところが実はスミレの種のほとんどは、虫媒受粉によるのではなく、地際にできる閉鎖花の中で自家受粉したものである。では密壺まで用意してなぜスミレは虫を誘うのか。それは親とは大きく異なる遺伝子型を持つ子孫を残して、環境の激変に保険をかけたものと考えられている。
それだけではない。栄養分を種皮の一部に含ませ、蟻に貯蔵食として巣穴に運ばせる。こうして種子を広く散布する。なかなかどうして、「ゆかしい」だけの植物ではなく、子孫繁栄のためにしたたかな戦略を持った植物である。


2.ヒトリシズカ(センリョウ科センリョウ属)Chloranthus japonicus
 1茎に1〜3cmの穂状花序を1個立てる。その姿から一人静の名が付いた。花弁はなく3本の雄しべの花糸が水平に出る。同属のフタリシズカは、より細い2〜3本の花序を立てる。


3.アマナ(ユリ科アマナ属)Tulipa edulis
花茎の基部に線形の葉が2枚出る。15〜20cmの花茎の先端に1個の花をつける。白色の花弁に暗紫色の筋がある。形がクワイに似た鱗茎は食用になり甘みがあるので甘菜の名がある。


4.サルトリイバラ(ユリ科シオデ属)Smilax china
 落葉蔓性半低木。枝に鉤状の刺があり、サルがひっかかるというのが名前の由来。雌雄別株。写真の花には雄しべが見あたらず、3裂した花柱が見えるので雌花と思われる。雌株には秋7〜9mmの朱赤色の実をつけるのでよく目立つ。


5.ワダソウ(ナデシコ科ワチガイソウ属)Pseudostellaria heterophylla
 長野県和田峠に多いから名付けられたという。茎の上部の2対の葉は大きく、接近してつくので4枚が輪生しているように見える。5弁の花の直径は約2cm、花弁の先はへこむ。雄しべは10個あるが、そのうちの5個の葯が花弁の上に乗ることが多く、花弁に褐色の斑点があるように見えることが多い。


6.ハナイカダ(ミズキ属ハナイカダ属)Helwingia japonica
 雌雄異株。昨年5月ミズキ属の植物の紹介の中でハナイカダの雄花の写真を載せた。今回のは雌花である。きわめて特異な花の付き方をする植物である。葉の主脈の中央付近に花をつけるが、雄花は数個、雌花は普通1個つく。写真はまだ蕾で、3〜4裂する花の様子がまだわからない。雌株は8〜10月頃、紫黒色の核果をつける。


7.イチリンソウ(キンポウゲ科イチリンソウ属)Anemone nikoensis
 イチリンソウは茎葉が3個輪生する点でニリンソウと同じであるが、後者が柄を持たないのに対し、イチリンソウは長い柄があり、小葉は羽状に深裂する。花も直径1.5〜2.5cmのニリンソウより大きく、3〜4cmはある。ただしニリンソウもイチリンソウも花弁はなく、萼片が花弁のように見える。


8.ニリンソウ(キンポウゲ科イチリンソウ属)Anemone flaccida
 花を1茎に2個つけることが多いのでニリンソウの名があるが、花は1個のことも3個のこともある。根生葉は長い柄があり全3裂する。茎葉は3個輪生し柄はない。
 自宅から歩いて5分の所にある立ち入り禁止の市有地に、ニリンソウが群生していて、フェンスの外から見ることができる。ここはウグイスの営巣地でもあり、湧き水があって6月の蛍の時期の夕方だけ一部が市民に開放される。


9.ヤチマタイカリソウ?(メギ科イカリソウ属)Epimedium glandiflorum
 イカリソウが普通紅紫色の花をつけるのに対し、これは白花である。白花を咲かせるものには、ほかにヒゴイカリソウ、トキワイカリソウがあるが、後者は日本海側の多雪地帯に分布するので、これではないだろう。
 イカリソウの花色は紅紫色〜白色とした本もあるので、あるいはイカリソウの白花かもしれない。
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10.クサボケ(バラ科ボケ属)Chaenomeles japonica
 ボケより小型低木なのでクサを冠された。朱赤色の花には両性花と雄花が混在する。ボケの実よりは小さいが梨状果を生じる。果実酒にすることもある。
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11 April

花便り(122)我が家の花(その3)

 応接にいとまがないとはこういうことだろう。ほとんど毎日新しい花が咲いてゆく。去年と重複するものもあるが、今回は6種9枚の写真を紹介する。

1.リキュウバイ(バラ科ヤナギザクラ属)Exochorda racemosa
 ウメザキウツギ、ヤナギザクラ、バイカシモツケという名もある。属名をバイカシモツケ属とした本もある。この属には中国を中心に分布する4種だけが含まれる。リキュウバイも明治時代に中国から渡来したとされる。
名前としてはバラ科であることと、花の姿を考えればリキュウバイが最もふさわしいだろう。茶の湯の利休とは関係がないが、いかにも茶花としてぴったりの風情を持つ。近所では珍しいらしく、足を止めて見上げる人もいる。ひと枝失敬していった人もいたが、挿し木で増やしてくれるなら嬉しい。
 この木の特徴の一つが実の形にある。普通バラ科の実はサクランボや梅などのように球形のものが多いが、この木の実は五つの稜を持ち、断面星形である。



2.ベニバナトキワマンサク(マンサク科トキワマンサク属)Loropetalum chinense var. rubra
 トキワマンサクの花は白黄色であり、日本では伊勢神宮に自生が見られる。園芸的には変種であるベニバナトキワマンサクの方が普及しているようである。これも中国から導入されたものである。桂林にはこの木がたくさん生えていた。
 我が家の葉は通常の葉色であるが、葉にも赤色色素が含まれている変異種があって、陽にすかしてみると赤く見えて美しい。




3.ニワザクラ(バラ科サクラ属)Prunus glandulosa cv. alboplena
 我が家の花は淡紅色の八重である。蘂がないので結実しない。樹高60cmほどのか細い落葉樹。高くなっても1.5mほどにしかならないという。室町時代から栽培の記録があるというのに、牧野図鑑には、ニワウメの1変種とあるだけで、独立した項目にはなっていない。しかしとても愛らしくて鑑賞価値は高い。母種のヒトエノニワザクラは中国中部に自生するという。近縁のユスラウメもニワウメも中国原産。日本に中国から渡来した植物がどれほどあるか見当もつかないほど多い。それだけ昔から交流があったことを示す。


4.ミツバツツジ(ツツジ科ツツジ属)Rhododendron reticulatum
ミツバツツジの仲間はトウゴクミツバツツジ、トサノミツバツツジ、コバノミツバツツジなど、10数種類が本州、四国、九州の比較的狭い範囲に棲み分けて分布している。これらをまとめてミツバツツジ亜属とする分類もある。外見は皆同じようなので素人には区別が難しい。その中でミツバツツジだけは、雄しべが5本しかなく、10本の雄しべを持つ同亜属他種とは容易に区別できる。
 4〜5月、まだ葉が展開する前に枝先に紅紫色の花を2〜3個付ける。樹全体が花に包まれ美しい。花芽は葉芽より大きく、花と葉が混じった混芽である。


5.シモクレン(モクレン科モクレン属)Magnolia quinquepeta
 ハクモクレンが葉の展開前に開花するのに対して、シモクレンは葉の展開と同時に開花する。開いたばかりの花を逆光で撮ってみた。


6.ブドウムスカリ(ユリ科ムスカリ属)Muscari armeniacum
 秋植え、春咲きの耐寒性の球根植物。アップで撮った花はなかなかの魅力である。

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05 April

花便り(121) モモ4態

 いまモモが花盛りである。果樹としてのモモのほか、花を愛でる園芸種もいろいろある。その4態を紹介する。

1.源平枝垂れ? Prunus persica cv Genpeishidare
枝が垂れ下がり、一本の木に紅白の花が咲き分ける。06.03.30撮影。


2.ホウキモモ
 我が家にある、紅白が対になった樹。箒のように多数の枝が直立するので、高さの割に植え付け面積が少なくて済む。06.04.03撮影。


3.キクモモ
 雄しべが弁化してキク咲きになった品種。17世紀の中国書にすでに現れるという。04.4.21撮影。


4.シダレモモ
 06.04.04撮影。

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